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2013.11/17 千葉県リサイクル工場の事故

「事故が起こるはずがない施設だった」と社長が謝罪したという。「20年間この作業をしているが事故が起こったことはない。なぜ起きたのかと思う」とも。事故は廃油から不純物を取り除く工程で起きたという。

 

事故原因はまだ明らかにされていないが、可燃性の油を使用しているならば100%事故が起きない、という保証を誰もできない。冒頭の社長の言葉は、福島原発の教訓を学んでいない発言である。

 

ゴム会社に入社し1年目に、実験室のオートクレーブの爆発事故を目撃したため、32年間研究開発に携わり、一番気をつけてきたことは安全対策である。オートクレーブの事故はもの凄い音だった。幸い安全対策が十分されていたので、操作していた女性は腰を抜かした程度だったが、恐怖感から同一業務を担当できなくなった。

 

事故原因は不明だった。ただ、圧力がかかりすぎたときに開くはずの安全弁にはゴムが詰まっていた。それが事故で詰まったのか、以前から詰まっていて機能しなかったために爆発したのか納入業者立ち会いのもと調査を進めても解明できなかった。

 

オートクレーブ中の反応はラジカル反応であり、その制御がうまくゆかなかった時には、爆発する。しかし、責任者は制御した反応条件なのでその可能性は無い、ときっぱり否定したために原因不明となった。ただ、化学をご存じの方は気がつかれたと思われるが、ラジカル反応が暴走したときにはもう手の施しようが無い。ゆえにそのような反応を扱う装置では、二重三重の安全対策が取られなければならない。オートクレーブの爆発事故では、三重の安全対策がとられていたので、音が外に漏れただけで大事故に至らなかった。

 

福島原発では安全対策が不十分だった上に、補助電源車のコネクターが合わない、とか温度センサーの電源が外れていたとか、工場の配管を詳しく知らない技術陣とかお粗末な事態が重なり、現在制御された状態になっていても怪しい事故(注1)が起きている。

 

事故は起きるものである、あるいは人間はミスをするものである、という前提に立った安全対策がされない限り、事故を防ぐことはできない(注2)。すなわち事故が起きても周囲に影響を及ぼすような大惨事に至らない安全対策が本当の安全対策である。

 

ちなみに使用済みの天ぷら油でも自然発火する危険性があることは主婦でも知っている知識である。油の中にラジカルを発生しやすい過酸化物ができるためで、昔は天ぷら油を何度も使用したので、それが原因の火災が何件か毎年起きていた、と聞いている。今回の火災原因の解明はこれからだが、可燃性の油を取り扱い、事故が起こるはずがない、と考えるのは危険である。事故は起きるものである、という前提が重要で、安全な作業職場でも必ずKYTは行われている。

 

(注1)例えば汚染水のタンクを傾斜した土地に設置し、高いタンクから低いところのタンクまで連通管でつなぎ、一番高いタンクだけに1本水位センサーを設置した汚染水漏れ事故は、どのように理解すれば良いのだろうか?汚染水を貯める前に、一番低いタンクから水漏れを起こすであろうことは、高校の物理レベルの知識ですぐに気がつくはずだ。

 

(注2)ボーイング787の二次電池の事故では、電解質は炭化して外に飛び出したが、飛行機には影響を与えていない。GSユアサの技術の賜物であるが、それでもその後さらに二重三重の安全対策に取り組んだと言うから凄い。確かにその後事故は発生していない。

 

 

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