2013.12/05 混練機構(6)
高度経済成長時代と異なり、サラリーマンは大変な時代である。管理職の階層も簡素化された企業が多い。簡素化されても会社の先行き不透明感からカオス状態のプレーイングマネージャーもいるかもしれない。多くの階層があった状態が、失われた20年の間に圧縮され折り曲げられて、経営者層管理者層担当者層の区分けがよく練り上げられた組織体制に変貌していった。
混練にも層流状態が折り曲げられ、分配混合と分散混合をうまく組み合わせて進行するカオス混合がある。カオス混合は餅つきやパイ生地練りに見られる混練方法である。例えばオープンロールによる混練ではカオス混合を実現できる技があり、効率良く均一分散と微細化を進めることが可能となっている。
オープンロールでは、ロールにゴムを巻き付けて運転するだけでも狭いギャップのロール間を通過するだけで高い応力がかかり、分散混合で微細化が進行する。ここにナイフを用いた返し作業をうまく行うとカオス混合となるが、このナイフ作業には高いスキルが要求される。30数年前このナイフ作業で悪戦苦闘し技を1週間で習得した体験がある。
この悪戦苦闘のきっかけを与えてくれたのは当時の指導社員で、カオス混合を機械で連続的に実現する装置を考えると混練に革新をもたらすと教えてくれた。カオス混合とはどのようなプロセスなのか勉強するためにオープンロールの技を鍛える必要があったのだが、練習の効果が出てナノオーダーで樹脂が分散した樹脂補強ゴムを開発することができた。TEMで撮影されたナノオーダーの海島構造を見たときに感動した。
10年ほど前に偏芯二重円筒で発生するカオス混合流に関するシミュレーションの論文が発表されている。偏芯二重円筒の装置以外にも写真会社から二軸混練機に取り付けてカオス混合流を発生させる装置が実用化され5年前に特許出願済みである。この装置を用いるとPPSと6ナイロンを相容させることが可能となる。
最近混練分野においてカオス混合に関心が高くなっている。混練は2世紀近い技術開発が行われてきたが、ナノテクノロジーの生産性を改善する目的で研究開発すべきではないだろうか。もしこの技術に興味のある企業があれば、研究のためにご協力をお願いしたい。新たな構造を考案したのでそれを実験で確認したいのだが弊社には混練機が無い。実用性のある研究テーマです。
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