2013.12/15 開発のゴールイメージ
オカラハンバーグのゴールを見直し、「オカラを使用したおいしいハンバーグ」というゴール設定をして、1年間に渡るおから食品の開発実績を踏まえ、コストを考えず最もおいしくなる条件でオカラを使用したおいしいハンバーグを作ってみた。家族の評判は上々で、ソースが無くてもそのままでも味わえる大変おいしいハンバーグが完成した。
昨晩おいしいハンバーグを食べながら、改めて研究開発のゴール設定が重要であることをかみしめていた。当初設定していたゴールは、「究極のオカラハンバーグ」である。オカラを活かす調理方法でオカラハンバーグを開発していた。おいしいのは当たり前のつもりでいたが、食感という難題について解決の糸口が見つからなかった。オカラに含まれる水分が影響していそうであるが、ハンバーグに持ち込む水分を少なくする工夫やオカラの使用量を少なくしても食感は変わらなかった。
思い切って現在使用しているオカラにこだわらず、ゴールをとにかくおいしいハンバーグとしてみた。おからは乾燥おからを使用し、肉は松阪牛肉の切り落としをミンチにして使用した。タマネギは、炒めて甘みを増すように工夫した。この時の炒め方は水分を飛ばす目的では無く、味を確認しながら甘みが増したところで炒めるのをやめた。近所の肉屋からハンバーグをジューシーに作る秘伝も教えてもらい、「おいしくなる」と思われる手法をすべて取り入れた。その結果、おからを使用してもおいしいハンバーグができた。
「究極の」から「おいしい」と明確な表現に変えただけで、ゴール実現のためにとるべきアクションが変わる。すなわちとにかくおいしさだけにこだわり、おいしさを実現するアクションだけに絞り込む、という決断が可能になる。「究極の」では曖昧だったのだ。実際の研究開発でも似たような経験をしている。後工程の製品開発部隊から、根拠の無いスペックを言われ、それをそのまま開発のゴールに設定した体験である。
製品開発部隊で決める製品スペックの中には、過去から引き継いできたスペックをそのまま採用し、設定する価値の無いスペックが残っている場合がある。製品のシステムが変わったり他の機能が上がり、昔のスペックが他の機能のおかげで重要でなくなる場合である。しかし、それでも製品開発部隊は「一応」そのスペックを残している。
しかし、開発依頼を受ける側にはそのような事情が伝えられることはない。不要なスペックでもそのスペックの根拠を知らない前工程では、そのスペックを守ろうと開発するが、変更したシステムでは、どうしてもそのスペックを実現できない状況が生まれたりする。
その様な場合、重要ではないスペックを緩和することでゴールを達成できるようになる。曖昧なゴールは、具体化すれば明確にできるが、このようなゴールは、後工程であるお客様とのコミュニケーションが重要になる。コミュニケーションと言っても「ネゴ」となるが、同じカテゴリーである。コミュニケーション一つで研究開発の成否が大きく影響を受けるのである。
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