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2013.12/19 高分子の相溶(3)

合成技術をもったあるメーカーにお願いし、様々な重合条件でポリスチレンを合成して頂いた。すなわち合成条件が変わればポリスチレンの重合様式も変わり、安定なコンフォメーションに違いのあるポリスチレンができるのではないか、と期待した。これをアペルに混練すれば、アペルのアモルファス相で安定に相溶する、と仮説を立てた。

 

重合条件については300程度まで頑張ってみようと、気合いを入れて取り組んだ。運良く16番目に重合されたポリスチレンをアペルに混練した時に透明になった。すなわち15番目までは不透明な混練物しかできなかったが、ポリスチレンを30wt%配合しても透明になる混練物が16番目の重合条件で合成したポリスチレンでできたので、それを射出成形しテストピースを作ったところ透明になった。

 

このテストピースを加熱すると面白い変化が起きた。ポリスチレンのTg付近でテストピース全体が白濁し、アペルのTg以上ではまた透明になったのだ。また、白濁になる過程を見ていると、テストピースのゲートに近いところから白濁が始まり、樹脂流動の様子がうかがわれるように全体が白濁してゆくのだ。美しい光景である。

 

300の実験を覚悟して16番目にできたので相当運が良い、と思った。運が良い時にはよいことが重なるものである。写真会社がカメラ会社と統合し、PPSと6ナイロンの相溶を検討できるチャンスが生まれた。ポリオレフィンとポリスチレンの相溶実験は、窓際の席になった時に何か面白いことができないか狙って行った実験であるが、PPSと6ナイロンの相溶はフローリーハギンズ理論から誰にもできないと思われるが、しかし社業へ大きく貢献できる仕事である。

 

サラリーマンとして初めて単身赴任を経験するチャンスでもあった。ゼオネックスについてもアペル同様その問題点を深く調べたかったが、PPSと6ナイロンの相溶に興味が惹かれた。東工大扇沢研究室からPPSと4,6ナイロンの相溶実験の論文が発表されていた頃でもある。

 

PPSと4,6ナイロンではχは0になるが、6ナイロンではχは0.14程度になり、これをコンパチビライザーを用いずプロセシングで相溶させてやろうと考えた。成功できればアカデミアの先を行くことになる。

カテゴリー : 一般 高分子

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