2021.10/04 無機高分子による難燃化
表題は高分子発泡体を難燃化する技術開発を行っていた時の技術コンセプトである。始末書を書く原因となった世界初のホスファゼン変性軟質ポリウレタン発泡体の工場試作に成功した時に思いついたコンセプトである。
当初は、世界初の難燃化技術を開発するのが当方の使命だと言われ、オールコックによるホスファゼンを用いた高分子の難燃化研究が発表された時代に、ホスファゼンのジアミノ体を合成しイソシアネートと反応させれば、分子内にホスファゼンを導入することができ、オールコックの研究結果より優れた成果を出せるのではないかと期待して実験している。
期待通りの研究シーズを1週間ほどで出すことができたので、係長が課長と相談して半年後の工場試作を決めている。簡単な技術と誤解したのである。徹夜を繰り返して実験をしていたことを知っていても入社した若僧が1週間ほどで出せる成果など大したことはない、と考えたようだ。
モノの評価能力というものは、その人の知的能力に大きく依存する。世の中にはその能力が低くても自信にあふれている不思議な人がいる。そのような人は、とかく他人の成果を低く評価する傾向がある。
ただし、低く評価されたおかげで一人で仕事を進めることができ、自由に研究ができた。その結果、高分子を難燃化するときに、燃焼している高分子をどのように炭化促進したらよいのか、当時問題となっていたテーマのコンセプトをゆっくりと考えることができた。
ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の開発は、コンセプトに基づくものではなかったが、その研究開発過程でこの研究のコンセプトをじっくりと考えることができた。そして考えたのが表題である。
始末書にはもう少し人目を引くように(セクシーに)燃焼時の熱を利用してガラスを生成する難燃化技術というコンセプトを書いている。このコンセプトで天井材の開発まで行い、高純度SiCの発明までコンセプトは有効に機能した。
現象を見てどのようにコンセプトとしてまとめるのか、あるいは、すでに機能のイメージができているならば、それをどのような不偏化した技術として示すのか、科学にとらわれていると言葉が出てこない。
小泉元環境大臣のようにセクシーととっさに言葉を思いつけるように日ごろから訓練しておくとよい。技術開発とは人類の日々の営みの一つであり、コンセプトの準備も技術者の営みのとして捉えられる。
ちなみにセクシーなる単語が公の場であのように使える単語であることをこの年で初めて知った。まだ未知のことは多いのでボケてはおれない。
pagetop