2014.01/08 ポリカーボネートの難燃性
フェノール樹脂ではソフトセグメントの量が難燃性を左右していた。そしてソフトセグメントの量は触媒の種類と量、加熱プロセスで制御可能であった。すなわち、ソフトセグメントが多いと難燃性が悪くなる。これは現在一般的に言われている、炭化層の生成速度よりも可燃性のガス発生が多いと難燃性が悪くなるという高分子の難燃化機構に当てはまる。
ポリカーボネート(PC)はフェノール樹脂ほどではないが、LOIが27前後と難燃性レベルの高い樹脂である。また、外観品質も良好なのでUL94-5VBレベルが要求される外装材に多く用いられている。UL94-V2レベルならばPCを用いなくても難燃性の樹脂を実現できるが、UL94-V0以上になってくると難燃剤を大量に添加するか、あるいは高価なPCを使用するのか、難燃化技術の選択に迫られる。
電子機器の外装材では成形体の外観品質に影響するので無機フィラー系の難燃剤を大量に使用することができない。そのためPC系のポリマーアロイが多く用いられている。PC系のポリマーアロイであれば容易にLOIが21以上の樹脂を製造可能である。
例えばLOIが18前後であるABSやPP,PET樹脂などは、PCを70%前後用いると容易にLOIは23前後になり、このポリマーアロイに難燃剤を添加すればUL94-5VBの外装材を設計できる。また、文献などが多数公開されているので難燃剤の種類を選択すれば特許に抵触しない処方も設計可能である。ただし、逆に特許を取得したいときには難燃性で特許を取りにくいので「驚くような品質」をパラメーターに用いた特許を作成することになる。このような安直な特許が驚くほど多い。
PCとのポリマーアロイではLOIが18程度の樹脂も驚くほど難燃性が向上する効果があるが、PAやPBTとのポリマーアロイでは期待するほどの効果が得られずがっかりする事がある。ちなみにLOIが24のPAの場合にはPCとのポリマーアロイ化で逆にLOIが1ポイント低下する。LOIが20のPBTでは、せいぜい1から2程度の向上である。
これはPCがPAやPBTとポリマーアロイ化することで、それらのポリマーとのエステル交換反応やアミド化反応などが生じてPCの熱分解温度が下がるためである。PETやポリ乳酸の場合も同様の現象が起きているはずであるが、それらはPCとポリマーアロイ化したときのLOIの改善量が多いために問題になっていない。
高分子の難燃化技術は難燃剤の選択だけでなく、高分子の組み合わせや添加剤の影響も考慮に入れなければならないので経験の要求される技術分野である。また材料設計では強相関ソフトマテリアルという概念を用いることができる。
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