2021.11/21 高分子材料のツボ(6)
昨日紹介したアイデアは、高分子のガラス相を理解していないと考え出すことが難しい。科学に精通している人の中には、頭から否定してくる石頭硬志のような人がいる。
石頭氏の言い分は、O/W型コロイドをW/O型に、あるいはW/O型をO/W型に変換するときには電荷二重層が不安定となりミセル内部の物質が凝集し沈殿する、と説明される。
この否定的説明は科学に基づくもので正しい。しかし、これはコロイドにおける変化であり、昨日の話は高分子ブレンドをコロイドに変換するプロセスの変化だ。そこで生じる現象が異なっている。
混合するときに用いる設備や設定条件で発生する現象は様々となる、やってみなければわからない世界である。二種の高分子のブレンドはコロイドとは異なり、組み合わせる高分子の種類により、あたかもコロイドのような海島構造となる場合もあれば複雑な構造で安定化している場合もある。
海島構造となった場合でも界面の構造は様々であり、面白いのはプロセシングによりそれが変化するということだ。例えば、複雑な組成のゴムをロール混練してみると容易にそれを経験できる。混練時間経過とともにブレンド状態が変わる。
この状態変化は、電子顕微鏡で観察してわかる場合と分からない場合がある。電子顕微鏡で同じような構造に見えるコンパウンドでも、加硫したゴムの物性を比較すると異なった物性を示す。
このことから、高分子のブレンドがコロイドとは異なるカテゴリーの混合物であることを理解できる。コロイドでは相界面に電荷二重層が生じるが、高分子のブレンドはその組み合わせにより界面の安定化構造は異なる。
高分子のガラス相では、2種以上の高分子の相溶以外に添加剤を溶解する能力がある。無機ガラスでは、他の組成のガラスを添加した場合に全体が新たな組成のガラスに変化する。その時ガラス相を形成できなければ、余分な成分から結晶が析出してくる。
高分子のガラス相は無機のガラス相と異なる状態変化を示し、これはモノマーが重合してできた長い高分子鎖、これを1次構造というが、この特徴ゆえの現象である。ちなみに、一次構造の上位の構造、すなわちガラス相はじめ高分子の作り出す様々な構造は、十羽ひとからげで高次構造と呼ぶ。最近はこれを階層的に分ける考え方が流行している。
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