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2021.12/04 付加価値とブランド

かつてブランドが付加価値の一つと言われ、企業のブランド価値を上げる努力がなされた。しかし、市場の変貌あるいは縮小等の要因により、ブランド価値が高くても企業の存続が難しい時代でもある。


例えば、オーディオスピーカーのB&WやJBLは、かつてのオーディオ市場では高級ブランドの一つであるが、今企業の存続すら難しい状況に陥っている。


音工房Zという10年ほど前に起業したスピーカーメーカーの実験で、300万円のスピーカーと聴感上同じ品質のスピーカーを40万円前後でできることが示されている。ここで同等品質とは、多数の人のブラインドテストを行ったときに差がない、という意味においてである。


ギターのマーケットでは、倒産しかかったギブソンがブランド戦略でその立て直しを図っている。カスタムショップでビンテージ感のある製品を市場に投入しており、高いものでは100万円をこす製品もある。


新製品も同様で、同じ型式の新製品の価格が100万円程度異なることもある。これは品質管理を学んでいたなら、品質のばらつきが大きい商品を販売するメーカー、とか品質管理のできていないメーカーと言う烙印を押したくなるような状態だ。


例えばES335という型式のギター(注)では、安くても25万円前後から130万円前後まで存在し、このギブソンよりも高い品質の製品をアイバニーズブランドならば7万円前後で入手できる。アイバニーズは名古屋に本社のある星野楽器のブランドだが、今世界3位のブランドといわれており、ギブソンと同等以上のブランド価値である。


アイバニーズは安いギターばかり作っているのではなく、ES335タイプで40万円前後の製品も存在する。40万円前後の製品と7万円前後の製品との違いは、主に材料の違いと生産場所の違いである。


40万円前後の製品は日本製だが、7万円前後の製品はインドネシアや中国で生産されている。驚くのは40万円前後の製品と7万円前後の違いは、トヨタのレクサスとカローラほどの品質の差がないのである。


自動車と異なり、楽器では付加価値の差を生み出すところが少ないので、比較として正しくないことは承知しているが、日本製でないことを我慢できるならば、7万円前後のギターでも十分練習できる。


なぜなら、エレキギターに使われているピックアップやその他電装品は同じで、弦も同じである。演奏者の力量に40万円と7万円の差をみいだすことを求めるのは難しいだろう。


アイバニーズというブランドを世界3位まで押し上げた原動力は、高い品質とコストパフォーマンスにあると思われる。これはトヨタのブランド価値とよく似ている。


トヨタはレクサスという高級車ブランドを持っているが、日本ではクラウンの位置づけを悩んでいるという記事を以前WEBニュースで読んだ。当方の世代ではレクサスよりも「いつかは、クラウン」と思っている人が多い。クラウンにはレクサスと異なる付加価値があるように思うのだが。


(注)20年ほど前に閑職となった時、たまたま降りた御茶ノ水駅で店じまいをしている楽器屋で新品展示品19万円のES335を見つけて衝動買いした。ほどなくして豊川へ単身赴任し忙しくなり、ES335は埃をかぶることになったが、これを2年ほど前に断捨離した。16万円で売れたので本物だったのだろう。コロナ禍となり、友人が高価な手工ギターをオーダーし楽しんでいる、とメールに書いてきた。それならその1/10の価格で満足できるギターを買おうとしてオークションで楽器店から新品展示品定価14万円相当のアイバニーズのES335タイプのギターを7万円で落札できた。驚いたことに16万円で売却した本家ES335よりも品質が高いのだ。指板に使われているローズウッドは素人がみても高級と分かる緻密な木目模様である。またフレットの角の処理もギブソンのように引っかかるところが無い。また、ボディーの杢目もトラメがきれいに出ており最高級品のメイプルが使われている。生音はギブソンのES335よりも大きいだけでなく、音の出口のfホールの小口にもアイバニーズのギターは装飾がなされている。木口むき出しのギブソンの製品とは大きく異なるところだ。ピックアップを通した音色もアイバニーズの方が好みの音である。ギブソンは特有の図太い音で4万円の安いエレキギターにありがちな音色だった。ギターのプロではないのでこのあたりの評価が正しいかどうかは不明だが、少なくとも工業製品として見たときに、どちらが7万円のギターかわからなくなる。ただ思うのは、19万円のギターを売却して16万円もらい7万円支払って19万円よりも高品質のギターに交換できた、すなわち閑職の時に衝動買いしたおかげで9万円以上儲かった可能性がある、と言う事実である。ギブソンと言うブランド力はすごい。

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