2022.01/07 高分子の劣化
高分子材料の劣化問題は未だに科学的に未解明の領域である。しかし、企業ではアーレニウスプロットを活用して行っているのが実状ではないか。
1980年代に高分子の化学劣化については活発に研究された。1970年代に熱分析技術が進歩し、熱以外の因子による劣化機構について学会発表が多かった。
それらの成果を受けて、企業で材料開発を行う場合に市場環境における劣化因子を入れた環境条件において、温度を3点以上変化させてアーレニウスプロットを行って劣化予測する手法が定着している。
力学機能だけでなく、電子機能についてもそれに準じて行われているのが実状である。ゴム会社ではそのような劣化予測は否定されていたので、おそらく現在も実際の劣化状況を確認して品質設計を行っているかもしれない。
当方は、このゴム会社の姿勢は正しいと思っている。さすがに「最高の品質で社会に貢献」を社是としている会社だ。安直な科学の成果を使って技術開発された製品の品質評価を行っていない。あくまでも現物現場主義だ。
一方でこのような現物現場主義について科学を錦の御旗として掲げ否定する技術者も多い。当方はハイアマチュア向けの高価なカメラF100が防湿庫に保管された状態でフィルム蓋の壊れた姿を見て愕然とした経験を持っている。
高価なカメラではあったが、その破壊状態から手抜き開発されたかあるいは安直なアーレニウスプロットで設計されたのか不明だが、壊れ方は安物のカメラよりもひどかった。
サービスセンターに持ち込んでも1万円以上かかるというので、この壊れ方を材料の破壊セミナーで使わせていただくと了解をえて、修理をあきらめた。
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