活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2014.02/02 ケミカルアタック(4)

前回まで説明したようにケミカルアタックは科学的に扱いにくい現象であり、それを逆手にとって問題のある樹脂を供給しながら、原因をケミカルアタックにして煙に巻くような樹脂メーカーもあるので成形技術を担当している人は注意する必要がある。成形現場に怪しいところがあると永遠に結論を出せなくなる。

 

現代の高分子の分析技術は正体不明のケミカルアタックを完璧に証明できるほどのレベルではない。ケミカルアタックとは樹脂供給メーカーがエラーを認めなかったら原因が闇の中になってしまうような問題である。換言すれば誠実な樹脂供給メーカーであれば、ケミカルアタックという問題が発生したときに現場対応で迅速に問題解決する。

 

しかし証明ができなくとも樹脂メーカーの担当者が成形技術者を煙に巻こうとしているかどうかは、樹脂の破壊機構を学べば見当がつくようになる。まず実務の手順から説明する。樹脂の破壊した箇所は汚染しないように注意して保存することが重要である。破壊した箇所から、樹脂に配合されていない油や界面活性剤などの「ケミカル物質」が見つかったならケミカルアタックの可能性が高い。現場からケミカル物質を除去する作業が対策になる。

 

ケミカル物質が検出されなかったときにどうするか。フラクトグラフィーを行い破壊に至った原因を探る。具体的には、破壊の起点を探すのである。破壊の起点がケミカル物質と無関係のボイドやクレーズだった場合には樹脂起因の可能性が高くなる。

 

成形体から引張試験片を切り出し引張試験を行い、強度が仕様どおりかどうか調べる。樹脂に問題があるとこの強度のばらつきが大きくなるか、あるいは低いところでばらつきが小さくなって観察される。

 

強度の低いサンプルの破面を観察し、ボイドやクレーズが破壊の起点になっていないか探る。すると樹脂に問題があるとそのような破壊の起点が幾つか見つかる。このような結果が出たら樹脂に問題がある。ペレットを観察するとスが入っていたり、ペレットにボイドやクレーズが観察されたりする。

 

ただし、この評価を樹脂メーカーに示しても難癖をつけて認めないメーカーもあった。直接の証拠を示すためにスの入ったペレットや、それを生産した現場(中国)で温度管理がされていなかった証拠写真を示しても、そのメーカーはケミカルアタックではない、という実験結果を認めなかった(注)。そのような不誠実なメーカーからは樹脂を購入しないことだ(続く)。

 

(注)引張試験片を成形体から切り出すときに、正確にダンベル試験片の形状にするのは難しい。試験結果が低くなるのはダンベル試験片の形状と指摘されたり、問題を示すDSCのベースラインが少し怪しい、などと難癖をつけられた。こちらも悔しいから不可能に近いDSCのベースラインがまっすぐになったチャートを見せてみろ、といったらその場で約束したが一ヶ月経過しても送られてこなかった。ペレットのスが観察されなくなったら問題が解決した。状況証拠では混練の温度管理が悪く状態の悪いペレットが原因であったことを示している。樹脂メーカーと類似の問題を経験された国内の成形樹脂メーカーはお気軽にご相談ください。ケミカルアタックの問題に関しては対応方法を電話にて無料で指南致します。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

pagetop