2022.02/12 才能
10日に行われたフィギュアスケート男子フリースタイルは、300点越えが確実に期待された選手が4人いた歴史的大会である。少なくとも4人の選手が、普通に演技をしておれば過去の実績から確実に300点越えでメダルが争われた大会になったはずだ。
しかし、羽生選手と宇野選手は自己へのチャレンジを優先して、両選手は300点越えできず、宇野選手はシルバーコレクターを返上し銅メダルとなった。
驚くのは羽生選手であり、SPが100点に届かなかったとはいえ、彼のこれまでの実績から普通にプログラムを組んでも300点越えが確実だったにもかかわらず、4回転半(以下4A)にチャレンジし、ミスを重ねる結果となった。
しかし、チャレンジを優先した両選手ともその試合結果に満足していた。戦略が勝負を左右する競技では、勝つための戦略により勝利を手にしても称賛される。
例えば過去におけるライバル対戦、キムヨナ選手と浅田真央選手との戦い方は対照的で、女子選手でトリプルアクセルが難しい時代に、浅田真央選手はリスクがあってもトリプルアクセルにこだわったが、キムヨナ選手は安定に得点できるプログラムで戦っていた。
片や戦略的に高得点を安定に稼げるプログラムで戦い、それに対してトリプルアクセルを2本入れるなど積極的にリスクを取り、挑戦し続けた2選手の戦いは、国際大会ごとにシーソーゲームとなった。
ソチ五輪で浅田真央選手は、ミスを連発しSPで16位となるもFSではキムヨナを抜く得点で6位入賞まで挽回している。
今回の羽生選手のSPの演技を見ていて浅田真央選手と重なり、100点に届かず8位となった彼を見て、FSで本当に4Aに挑戦するつもりかもしれない、と当方はこの年でありながら何故か胸の高まりを感じた。
そして、期待通り彼はFSで4Aに挑戦した。残念ながら着氷に失敗し転倒するが、審査委員は4Aを認定した採点をしている。
宇野選手も羽生選手も人並外れた才能を持つスケーターである。彼らは、常に勝つこと以上に才能を磨くことに挑戦し続けている。フィギュアスケートという、ともすれば採点に芸術点というあいまいな要素があるスポーツであえてリスクを取り彼らは新しい時代へ導いている。
カテゴリー : 一般
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