活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2022.03/01 樹脂の耐久予測

高分子材料の耐久予測技術は未完成のままである。金属やセラミックスでは、破壊力学が有益な情報を提供してくれる。しかし、高分子材料では非線形破壊力学が提案されてから進歩していない。


このあたりを正しく理解されている技術者は少ない。その結果として、ハイアマチュアカメラとして知られたN社のF100の裏蓋フックが防湿庫で自然に壊れてしまうような出来事が起きる。


このF100の裏蓋フックの破壊はショックだった。システムを揃えるのに50万円以上かかった、というケチな理由からではない。


ほんの少し注意深い実験をN社の技術者がしていたならば防げたからである。この「ほんの少し注意深い実験」とは、機能に着目した実験である。


これを行わず、クリープ破壊寿命予測から材料設計していた可能性が高い。フックの破壊は、破面観察から典型的なクリープ破壊と考えられる。


金属では実験による寿命予測式がそれなりの信頼性を築いてきた歴史があるが、高分子材料では、40年前から懐疑的にみられている形式知だ。


問題はこのような形式知が未だ修正されず、高価な専門家向け教科書に掲載されていることだ。1970年に材料メーカーから密度が0.02高くなるとクリープ破壊応力が約2倍となる実験結果が報告され、WEBに公開されている。


このレポートの意味するところは、密度が0.02下がっただけでクリープ破壊応力が半分になるということだ。


F100の裏蓋フックの密度の基準がどのようであったかは知らないが、クリープ破壊強度から寿命予測を行う方法は良く用いられるが、このような問題があることに目が向けられていない。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop