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2014.03/21 科学者に求められる誠実さと真摯さ

STAP細胞の騒動で科学者の倫理が問題にされたが、ニュースや週刊紙で報じられている内容を読むと、倫理という問題の前にドラッカーがリーダーに求めている誠実さとか真摯さという資質が研究者に欠如していると思われる事実が伝えられている。

 

すなわち誠実さや真摯さがあれば取られていただろうと思われる行動が、いくつか取られていないのだ。科学者という職業は知識社会のリーダー的存在であり、少なくとも公的研究機関で働く研究者には誠実さと真摯さが求められる。科学者というのはそのような職業である。

 

例えば週刊紙に報じられている研究ノートの問題について、いくらデジタル社会といえどもエビデンスとしてメモ程度でも肉筆で書かれた書類を残す教育が必要である。デジタル署名など認証技術が進歩してもデジタルデータは信頼性が低い。まだ肉筆のデータを残すのは面倒でも要求される時代であり、アカデミアでは、学生に徹底して実験ノートの重要性を指導すべきである。

 

企業でも会社指定の実験ノートを管理方法も合わせて仕組みとして備えている企業がある。知財対策のためである。例えばこんな事件を聞いたことがある。退職者Aが在職中に発明をした特許について部長だから発明者として名前を入れてもらえなかった、というおかしな訴訟が起きた。具体的な特許を訴訟の場で検証したときに、その特許の真の発明者はだれか、という議論になった。

 

Aは転職者で、自分の知識が無ければ発明できなかった特許だと主張した。しかし、Aが転職してくる1年前に書かれた某氏の研究ノートにその特許の発明のアイデアと簡単な実験結果が書かれており、某氏の上司の日付印がきちんと押されていた。結局裁判では、その実験ノートが証拠となりAの主張は退けられた。

 

科学者にとって実験ノートとは、単なる実験記録帳では無く、真実を確かめた人類の記録の証拠である。特に公的研究機関で研究に携わる人の実験ノートは税金が使われた記録でもある。実験ノートをそのように認識したならば、誠実な科学者であれば、デジタルデータとして実験ノートを残すだけではなく、真摯な姿勢として肉筆の実験ノートをつける重要性を感じるはずだ。

 

不誠実なAが目論んだ不当な対価の要求は、真摯に実験ノートをつけていた某氏のおかげで退けられ、企業は不要なお金を支払わなくても済んだ。ドラッカーが説く働く意味に「貢献」があり、公的研究機関で働く研究者にとって実験ノートとは社会に貢献している証拠となっていることを理解すべきだ。公的研究機関の研究者の実験ノートは単なるメモではない。社会に貢献している証である。

 

 

カテゴリー : 一般

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