2022.07/01 タグチメソッドの重要性
研究開発において実験は不可欠である。40年以上前、企業でもその実験方法は科学の方法により行われていた。しかし、30年ほど前から日本でタグチメソッドが普及し始めた。
タグチメソッドでは、科学の方法と異なる実験方法が行われる。科学では仮説の真偽を確認するための実験が行われるが、タグチメソッドでは基本機能のロバストを改善するための実験を行う。
技術開発とは新しい付加価値のある機能を創り出す活動であるが、かつての企業ではアカデミアのような研究が行われ、新しい機能は科学の研究過程で発見でもない限り、生まれなかった。
田口先生は、タグチメソッドを用いて実験を行うにあたり、基本機能として何を選ぶのかは技術者の責任とした。
ここで問題となるのが技術者の責任をどのように果たすのか、という難しい目標である。科学の方法では仮説の真偽しか見出せない。基本機能を見出す実験は技術開発によってのみ可能となる。
ところが小学校から社会に出るまでそのような実験方法を訓練されてこなかった。ただし、技術者を指向している人々により、それは密かに行われていたのだが、科学の方法を唯一とする企業では、それを否定したり禁止するところもあった。
当方はその方法を使用し、電気粘性流体の耐久性問題や高性能化のための基本機能を技術により開発したところ、会議前になるとFDを壊されるなどの妨害を受けるようなひどい目にあっている(注)。かつては科学の方法以外を許さないような企業研究所もあった。
そのような研究所でも当方は真摯に技術開発を指向し、ポリウレタンの新しい難燃化技術や難燃性天井材、半導体用高純度SiCの開発、傾斜機能粉体を用いた高性能高耐久電気粘性流体の開発など新しい機能を備えた技術を生み出している。
また、タグチメソッドに類似の実験方法、基本機能の感度最大の条件を見出す方法まで生み出したが、機能を重視した実験を行えば自然にその方法をだれでも指向するはずだ。
田口先生にはこの方法が感度重視の方法である、と褒めていただいたのだが、信頼性工学の視点からは好ましくなく、感度ではなくロバストを重視するのが正しい、とご指導を受けることになった。
(注)当方は上司の指示により、学会活動も新入社員時代から行っている。ホスファゼン変性ポリウレタンフォームは研究として高い評価を受けている。この研究をもとに機能に着目しホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームを開発実用化した。さらにこの機能を使い高純度SiCの新合成法を生み出し、この反応の速度論的研究を行い学位を取得している。科学の研究の方法は小学校から訓練されてきた方法であり、誰でもできるが、技術の方法は訓練が必要である。7月には1日でわかるタグチメソッドセミナーを企画しているので興味のあるかたは参加していただきたい。
pagetop