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2022.07/26 花王のパソコン革命(3)

当方の独身寮生活は、MZ80K一色の生活となった。会社では仕事をして独身寮に戻るとプログラミングの日々となった。プログラミングが趣味となった、と書きたいところだが、当方はプログラマーなど目標としていなかった。


独身寮にはギターとオーディオセットがあり、そこにMZ80Kのシステムがおかれたので、自由に身動きできるのはベッドの上だけ、という状態だった。


日中はホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの開発を行いながらプログラミング内容を考え、夜は12時過ぎまでプログラミングという日々となった。


プログラミングの日々と言っても情報工学という学部設立が話題になっていた時代であり、ほとんどわけのわからない分野について根性の勉強の日々というのが実態だった。


BASIC以外にアセンブラーやFORTH、パスカルを揃えていたのでどの言語を使ったらよいのか(注)4日で結論を出し、3日間かけて文献検索プログラムを作った。


リーダーから何か成果を出せ、と言われてサブリーダーと相談した時に、何かデータ検索できるプログラムを作ったらよいのでは、とサブリーダーからアドバイスを受けた。そこで文献管理のために文献検索ソフトを作ったのである。

入力画面や出力結果をプリントし、会社でサブリーダーに提出した。そこで問題になったのは、データベースを誰が入力するのか、という問題と漢字出力ができない問題だった。


MZ80Kにはオプションでも漢字ROMは用意されていなかったので不可能と説明した。当時のPC8001はじめ8ビットマイコンではどの機種でも満足な漢字出力は不可能だった。


花王のコンピューター部部長がソード社のパソコンを勧めた本当の理由が分かった。ただしインタビューの時には、普及パソコンでOAに必要な漢字を満足に出力できない機種ばかりだったことは一言も言われなかった。


これは、著書の内容と関係があった、と想像している。著書ではPC8001で漢字出力できるような錯覚をする表現になっていた。OA化に必要レベルの漢字が搭載されたパソコンは、当時ソード社の製品だけだった。


この普及パソコンで漢字出力できない問題が指摘されていなかった不誠実さ以外に、パソコンがソフトウェアーで動くことを述べながら、そのソフトウェアー事情について詳しく述べていなかった。


その結果、リーダーは動作するソフトウェアーというものが簡単にできるという誤解だけでなく、何か一つ動くソフトウェアーを作れば何でもできる、と信じていた。


そもそもソフトウェアーを未来の人工知能のように考えていた。現代の人工知能でも学習した分野以外の仕事はできない。ゴム会社の研究所管理職がこの程度であり、表題の著書による誇張表現のため、サブリーダーと当方は追い詰められていった。


リーダーに何か報告すれば、「どうして、これが明日までにできないのか」とか「上司のアドバイスを否定する前に仕事をやれ」とか、パワハラの嵐吹き荒れる打ち合わせと毎回なった。


(注)まずプログラムの仕様とコーディングテクニックを習得しなければプログラミングのできないことを今なら常識である。一方学習環境は今のように学習参考書など無く、簡単な説明書だけが頼りだった。パスカルやアセンブラーの構造化プログラミングスタイルがプログラムの可読性をあげることに気がつき、BASICでも意識して構造化スタイルでプログラミングするようになった。文献検索プログラムのコードをサブリーダーに見せたときにその読みやすさを褒めていただいたのは、今でも励みになっている。微分方程式を電卓で計算したり、カオス混合をご指導してくださったりと当方にとっては神様のような人だった。

カテゴリー : 一般

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