2014.04/14 薄膜塗布技術(2)
塗布プロセスと塗布液の関係を一言で論じるのは難しい。20年間の写真会社における開発で様々な塗布プロセスを体験し、そのプロセスに合う塗布液を開発してきた。また、前任者が開発不可能であった塗布液でも開発してきた自信から、塗布プロセスと塗布液の関係について教科書に書かれている内容を疑っている。
塗布プロセスと塗布液の関係において、レオロジーは重要な役割を演じるがそれだけではない。レオロジーをコーターに適合するようにしても「ハジキ」とか「メダマ」とか様々な品質故障との戦いになる。薄膜に導電性が求められた場合には、パーコレーションの問題まで考えなければならない。教科書はレオロジーの側面からの考察であり、レオロジーを合わせても実務では教科書通りにうまくゆかない場合が多い。
塗布液のレオロジーに関して静的に計測するのか動的なのか、またどのような条件で計測するかにより考察が異なってくる。コロイドのレオロジーでは、コロイドの安定性も重要で、コーターにおけるレオロジー変化を粘弾性の装置でうまく捉えているかどうかも問題になってくる。
また、塗布された後の乾燥過程でもレオロジーは、時々刻々と変化する。その変化を正しく粘弾性の計測器で再現することは難しい。乾燥条件によっては「皮張り」という現象が生じたりする。これは、全体が乾燥する前に表面が早くゲル化し、塗布膜内部の溶媒が飛びにくくなる現象だが、これが生じると薄膜の品質を著しく損なう。
教科書通り塗布液のレオロジーを計測しても皮張り現象をうまく捉えることはできない。皮張りを評価する方法ではじめて現象を理解することができる。パーコレーションが関係する塗布膜ではそのための評価を、ハジキが関係する場合には静的な界面評価だけでなく動的な界面評価が必要になってくる。すなわち、塗布技術では、塗布液の変化を捉える幾つかの評価技術が重要で、単に処方とレオロジーの関係で解決がつく問題ではない。処方とレオロジーの関係を研究して理解した。
カテゴリー : 高分子
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