2022.08/13 情報化時代の技術開発(10)
50年近く前、ゴムの新素材開発が積極的に行われていた。例えばSBRについても乳化重合技術の進歩で様々なSBRが開発された。同一分子式でも合成された材料の物性が異なり、物性を基にした特許も出始めていた。
ゴム会社はゴム合成部門を切り離し、子会社ではなく別会社として経営していた。新素材開発競争が激しくなったので素材開発から行うのではなく、配合技術の高度化でゴム開発を行う戦略だった。
新入社員テーマは当時の新素材TPEを配合技術で開発する研究だった。開発目標は樹脂補強ゴムと呼ばれ、少量の樹脂の海にゴムの島相が分散する構造を創り出す技術を開発しなければいけなかった。
すでに高分子の高次構造を制御し物性をコントロールしようという技術開発が行われていた時代であり、高分子の合成技術よりも配合技術やプロセシングに注目するのが先端技術者の姿勢とされた。
そして、例えばSBRについてプロセシングまで含めた素材パラメーターを設定し、商品品質を目的変数とした多変量解析が実施され、理想とされるSBRの姿がコンピュータを用いて示された。
AIは使われていないが、多変量解析と人間の頭脳を用いたデータマイニングの手法が開発されていた。商品開発部門の手法は社内の定期プレゼンテーションで学ぶことができ、樹脂補強ゴムを担当した時に偶然最適SBRの分子設計という当方にとって記憶に残る技術のプレゼンテーションを聞くことができた。
このプレゼンテーションのおかげで樹脂補強ゴムを効率よく開発するには、手当たり次第に配合を混錬しデータを出すことが重要と理解し、残業代がでないことが分かっていても夜勤を行い、指導社員が一年の研究予定で準備していた樹脂を一カ月で混練処理し、データサイエンスの手法で最適条件を求め3か月で実用配合を見出している。
カテゴリー : 一般
pagetop