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2014.04/26 フィルム成形と押出機(2)

押出成形の教科書を読むと押出機についてかなりのページが割かれている。PETやPPSの押出成形を経験して、押出機にはコンパウンドを溶融し押し出す能力があれば十分と思うようになった。押出成形に用いるコンパウンドは事前に十分な処理を混練機で行っておくのがコツである。しかしこれは少し教科書とは異なる見解である。教科書には押出機で混練する話まで書かれている。

 

混練機の機能と押出機の役割を明確に分担して考えるのは、射出成形の設計と同様である。射出成形では金型に樹脂を押し流すので、成形後の表面は金型の精度に支配される。ゆえに射出成形では押出成形ほど押出機について深く考えられた歴史はなく、L/Dの短い押出機になっている。そしてそれで不都合は生じていない。しかし、押出成形では、金型のリップ部の仕上げの影響も大きいが、大半はコンパウンドの素性でその表面の性能が支配される。

 

昔ゴムの押出成形を担当している職人から、「押出成形は行ってこいの世界だ」と教えられた。即ち、プレス金型でゴムを成形する場合には、金型の仕上げでゴムの成形精度は左右されるが、押出成形では、ゴムのコンパウンドの「でき」が成型精度を左右している。「行ってこい」とは、押出成形ではそのコンパウンドを丁寧に送り出すだけだ、という意味である。

 

この職人の言葉は押出成形技術をうまく表現している、と感心したので30年以上経った今でも覚えている。すなわちフィルム成形に用いる押出機では、コンパウンドを金型に押し出すこと以外を求めてはいけないのである。コンパウンドはその前に十分造り込んでおくのが押出成形の鉄則である。しかし30年の間に出会った押出成形の技術者からこの職人の言葉を聞いたことがないし、教科書にも書かれていない。

 

PPSの押出成形を担当してさらに理解を深めたのだが、コンパウンドを溶融し押し出すだけでも大変である。温度を上げれば樹脂を溶融できるのではないか、という人もいるがそれは押出成形をご存じない方である。確かに温度をあげればコンパウンドを溶融させることはできる。しかし、その温度を上げた影響がフィルムに現れるのだ。すなわち押出成形では押出機の中ですなおに溶融してくれるようにコンパウンドを造り込んでおかなければ、成形体の表面をうまく制御することはできない。

 

カテゴリー : 連載 高分子

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