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2014.05/07 フローリー・ハギンズ理論(3)

すでに指摘したように教科書に書かれているフローリー・ハギンズ理論(FH理論)は、二次元平面の中に二種類の高分子を仮想的に混合状態にして押し込んだときの自由エネルギー変化を議論している。そして、このモデルではそれぞれの高分子のモノマー構造が重要な意味を持っている。換言すればモノマー構造だけで判断しているに過ぎない。

 

だからSMALLの方法というSP値の計算結果とχパラメーターはうまく相関する。実際の高分子を混合したときには、このモノマー構造以外に鎖状の高分子が取る立体構造にも自由エネルギー変化は影響を受けるはずである。

 

このような仮説で、側鎖基にバルキーな基を持ったポリオレフィン樹脂にポリスチレン系TPEを相溶させる実験を行った。どのようなポリステレン系TPEでも相容するわけではない。ちょうどポリオレフィンの錠に対してカギの関係になるような立体構造のTPEだけが相溶し、透明な状態になる。

 

10年以上前にD社お願いし、様々なポリスチレン系TPEを合成してもらい、この錠と鍵の関係を探す実験を行ったら、うまく16番目に合成されたTPEで透明なポリマーアロイを合成することができた。この実験結果は、モノマー構造だけでなく高分子の立体構造も高分子の相溶に効果があることを示している。

 

余談だがこのポリマーアロイでフィルムを製造すると偏光フィルムとなり、クロスニコルの位置にすると暗くなる。ベンゼン環が複屈折を持つためだが、この詳細の特許出願は成されていない。当時の開発目標とは異なる性質で特許出願ができなかったためである。もしご興味のあるかたは問い合わせて頂きたい。

 

この実験に成功すると、二種類の高分子が混合された状態で圧縮を受けるとどうなるかが興味を持たれる。メカニカルな力で強引に高分子を接触させるぐらいの状態にして、緩和時間以内に両者の高分子のTg以下に冷却すれば相溶した状態を保持できるはずである。

 

このような仮説で実験したのが先日書いたPPSと6ナイロンの相溶化である。これは運良く開発ステージが製品化直前で、PPS/6ナイロン/カーボンの処方を変更してはいけない、という状態でテーマを引き継いだので大手を振って実験ができた。ポリオレフィンとポリスチレン系TPEの時のようにこそこそ実験を行う必要が無かった。

 

 

カテゴリー : 連載 高分子

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