2022.11/06 データ駆動による実験法(2)
具体的な方法を説明する。形式知から、弾性率は密度と相関している。線形破壊力学から狭い密度範囲において靭性は一定と期待できる。また、経験知から強度は弾性率と靭性を変数とした関数とみなせる。
これらの公知の関係を利用して、多成分ポリマーアロイの成分量を変動させて実験を行う。成分量の変動についてはラテン方格を用いても良いし、経験知から適当に変動させても良い。
得られた諸物性データについて横軸を密度、縦軸を力学物性としたグラフへプロットすれば、公知の関係から外れた条件を容易に見出すことができる。
そして強度の良好な群について考察すれば、改良因子を見出すことができる。(この実験では、すべてのサンプルが密度と弾性率の関係において、一つの直線状にプロットされるが、強度の値では、弾性率に相関した群とそれよりも大きな強度を示すサンプル群に分かれる。)
1990年ごろから日本で普及の始まったTMのおかげで、仮説を設定しないデータ駆動の実験により新材料を開発する手法を技術者は非科学的と排除しなくなった。
この方法では、仮説を用いた実験による真偽判定ではなく、計画された実験データから分散分析により最適な制御因子とその水準を見出し、それらを条件として採用した確認実験を終えて科学技術として完成させている。
また、MIあるいはTM、その他のここで紹介したデータ駆動の実験では、仮説の真偽を確認するために行われていないので、イムレラカトシュが指摘するような否定証明に陥る危険性は無い。
それゆえ実験により必ずモノを生み出すことができる。そもそも科学による実験と科学誕生以前から人類が営みとして行ってきた技術開発における実験とは、方法や手順が異なり、技術の方法では仮説設定は必須のプロセスとされていなかった。
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