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2022.11/23 データサイエンスとトランスサイエンス(6)

科学で問うことができるが、科学で答えられない問題をトランスサイエンスと言い、1980年代に科学論が議論された時、アメリカで生まれている。しかし、バブルがはじけた時期と重なり、日本では普及しなかった。


日本では環境問題が騒がれ始めた2007年に「トランスサイエンスの時代」が出版され話題になった言葉だが、高分子の相溶に関わる問題にトランスサイエンス現象と呼んでも良い事例がある。


PPS/6ナイロン/カーボンの配合組成で設計された中間転写ベルト(半導体無端ベルトの押出成形で製造されている)は、6ナイロンがPPSに相溶して初めて開発に成功した複写機のキーパーツである。


昨日の樹脂補強ゴムもこの中間転写ベルトもトランスサイエンス現象の成果である。科学ではうまく説明できないが、データでは現象の存在を説明できるので面白い。


中間転写ベルトのコンパウンド開発では、安定化指数という独自のパラメーターを設定し、品質管理し工程立ち上げに成功している。このパラメータは相溶の程度を検出でき、コンパウンドの品質管理に利用できた。


プラントが立ち上がり、タグチメソッドの再現を確認した。その時に、コンパウンドに関わる様々なデータを測定し、ベルトの表面比抵抗のばらつきを目的変数として、重回帰分析を行い標準偏回帰係数からヒントを見出している。


このとき説明変数をそのまま眺めていたのではなく、それぞれの説明変数の寄与率について考察を進め、新たなパラメータを設定し、そのパラメータと表面比抵抗のばらつきとの相関を再度単相関で吟味している。


多変量の回帰分析をAIで行おうとするマテリアルインフォマティクスの研究がこの数年盛んだが、すなおに重回帰分析で考察を進めたほうが、アイデアが出やすい。


重回帰分析では、説明変数の二次以降は誤差項に含まれるので、残渣分析も活用し、アイデアを練ることが可能である。


重回帰式を単に未知の値の推定式という活用だけでなく、複数の説明変数がどのように絡み合って目的変数と相関しているのか考察すると、単相関では見えていなかったパラメーターが見えてくる。


弊社のサイトでは無料で重回帰分析ができる。エクセルの表にデータをまとめ、それを張り付けるだけで計算できるので、わざわざAIのアルゴリズムを考える必要はない。


計算して出てきた数値の考察を進めることが重要である。重回帰分析のコツは一回計算して終わりとするのではなく、説明変数を加工したり、残渣分析を行い、データの中に潜む未知の知を探し出す努力を惜しまないことである。


科学的では無いが、技術として意味のある相関を見出すとそれがもとになり、新たなアイデアやコンセプトを練ることが可能となる。

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