2022.12/11 データサイエンスのスキル
ゴム会社に入社して半年間研修があった。工場実習や営業の実習、技術開発実習はじめ実務に必要なスキルをこの時に一通り学んだ。ゴム会社の研修は当時業界でも定評があり、半年間のこの研修を終了後配属されると配属先ですぐに実務にとりかかることができた。
この研修のカリキュラムで特に会社が力を入れていたのは、QC手法であり、社是「最高の品質で社会に貢献」は、企業姿勢を表すと同時にそのような商品開発が研究所以外で行われていた。
研修の講師は日科技連から派遣されており、QC7つ道具や新QC7つ道具を中心に徹底した技術者教育が行われたのだが、研究所に配属されてびっくりしたのは、職場の人たちはQCの研修をバカにしていたのだ。
配属されて業務をQC手法で行っていると、科学の研究では無駄だと周囲の先輩から笑われた。ただ最初の3か月間指導してくださった混練の神様のような指導社員だけは異なっていた。
QC手法以外のシミュレーション技法や現在話題となっているデータサイエンスとよべるスキルを教えてくださったのだが、これらの知識を表に出すと研究所では馬鹿にされるから、企画を練る時に使え、と指導された。
ゴム会社の研究所は、アカデミアよりもアカデミックで実験は仮説を中心に行わないと評価されなかった。また、良い研究成果が出ると学会発表も活発に行っていた。
しかし、長い間研究所から事業に貢献するような成果が出ない問題を抱えていた。研究開発本部長は1000に3つでも研究が事業につながれば大当たりだ、と真顔で語っていた(注)。
当時のゴム会社の研究所の風土は、タイヤ事業の開発部隊の風土とは大きく異なっており、半年間の研修を終えた新入社員の目には別世界であった。
そして、この別世界の研究所で、科学の手法と統計手法、すなわち今でいうところのデータサイエンスの手法の両方を用いて、頭を切り替えながら研究開発を行っていたのだが、このおかげでデータサイエンスのスキルの特徴を充分に理解することができた。今それをセミナーで公開している。
(注)フェノール樹脂とポリエチルシリケートのポリマーアロイのヤミ研究は、容易に認められて推進することができたのだが、それを事業化する提案を夢のような話だとされたのは残念だった。Y本部長がU本部長に代わり、事業化を推進できるようになったのだが、基礎研究段階でも「それが事業の何になるのか」考えることは重要である。U本部長の時に住友金属工業との半導体治工具事業として立ち上がり、それが30年ゴム会社で続くことになるのだが、Y本部長やI本部長だったなら、無理だったろう。企業の研究所に対する哲学で、研究開発の効率は大きく変わる。日本の企業の研究所にはU本部長のようなリーダーが必要である。このU本部長の迷言に「女学生より甘い」という今なら問題となる発言があるが、これは研究企画会議で研究所の管理職に発せられた言葉である。スピードワゴンの井戸田の「あまーーい」はその後有名となっているが出身地は同じ愛知県である。愛知県は八丁味噌が有名だがその他の名物として甘い銘菓が多い。また、八丁味噌には隠し味として、少し甘いはちみつを入れるとおいしい。
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