2022.12/16 高分子の難燃性(1)
高分子の耐熱性や難燃性について、科学的に解説することは難しい。これは1970年代に当時の研究成果がまとめられた耐熱性高分子の研究に関する総説で中途半端なまとめになっていることからもその難しさに納得できる。
耐熱構造と呼びたくなる分子構造は存在するが、実火災において不燃となる高分子材料を合成することはできないので、「高分子の不燃化技術」とは言わず「難燃化技術」と当時から呼ぶようになった。
高分子の難燃化について、日本人は、かぐや姫が火ネズミの皮衣を要求した話を自慢できる。科学の存在しない当時から有機物の不燃化が困難であることを知っていたことを示す昔話だ。
もし、有機物の不燃化が可能なら、結婚をせまる虫の好かない軟派な皇子に火ネズミの皮衣を要求するようなことをしない。高分子の難燃性について知識の無い皇子は、必死に探し回る。
そして、科学者もかぐや姫の求婚に応えたいと思ったのかどうか知らないが、有機物の耐熱構造を工夫し有機物を不燃化しようとする研究を1960年代に行っている。これが難しいことが分かり、1970年代から高分子の難燃化という用語が一般に使われるようになった。
この歴史を理解できると熱可塑性樹脂よりも熱硬化性樹脂の方が難燃性が高い、という仮説について成り立たない場合があることに気がつく。熱可塑性樹脂でも十分に難燃性が高い樹脂が存在する。
例えばPPSという熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂よりもロバストの高い難燃性を示す。耐熱性については、その指標により優劣が変化するが、難燃性のロバストについては、フェノール樹脂よりもPPSの方が高い、という経験知がある。
カテゴリー : 一般
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