2022.12/19 高分子の難燃性(4)
燃焼時に炭化しやすい高次構造になっているかどうか、という点と、炭化した構造が層を形成し酸素と熱を遮断できる機能が生まれるかどうかが、高分子の難燃化では大切である。
この時、気相で空気を遮断して炭化を促進する機構の難燃剤と固相あるいは液相で有機物の脱水触媒として働き、炭化促進機能を発揮する難燃剤の2種が存在する。
PEやPPなどのポリオレフィンの難燃化において、これを満たすように添加剤を工夫すると、後者で用いられるリン酸エステル系難燃剤の添加量を減らすことが可能となる。
PH01という新たな難燃助剤を5年前に開発したが、難燃助剤としてだけでなく、流動性改質剤としても機能することがPPで確認された。
PPのガラス繊維補強樹脂のMFRは流動性が悪く、そのために流動性改質剤を添加するが、そのかわりとしてPH01を添加すると難燃性を向上するだけでなく流動性まで改善できるので便利である。
PPと異なる樹脂ではどうなるか。たまたま、炭素繊維をPPSで被覆し複合材料を製造する技術の相談を受けたときに、このPH01を試したところ、PP同様に流動性が改質され、押出成形温度を10℃下げることが可能となって炭素繊維の酸化劣化を防止できた。
面白いのは成形温度を10℃下げる機能があってもTgには影響を及ぼさないのだ。この理由は、成形後PH01が球晶を形成し、PPSの分子運動性に影響を与えないため、と想像している。
このPH01の分子設計では、主に難燃化助剤として思考実験により開発しているが、高分子の燃焼状態を観察して得られた妄想でも体系化すれば、経験知として科学の形式知同様に活用できる。
カテゴリー : 一般
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