2014.06/25 第52回高分子材料自由討論会
昨日まで表題の討論会に参加していた。表題の討論会は、昭和30年代後半高分子の物性加工で分からないことが多かった時代に、学会が主催する講演会では時間が少ないのでゆっくり討論できる時間を取るためと官学交流の場として企画されたそうだ。
当方はゴム会社から写真会社に転職した20年前に東大N先生に紹介されて参加している。参加のきっかけは、ゴム会社で半導体用高純度SiCの冶工具事業を立ち上げ、FDを壊されるという事件で転職したばかりの頃、転職先の高分子技術のレベルが低く、当方が研究管理だけやっていたのではだめな状況だったから。
自らが技術を引っ張りあげなければレベルが上がらない、と考え、N先生にご相談した。N先生はゴム会社の先輩に当たり、当方のキャリアがセラミックスであったこと、そして学位を取得したばかりだったことなど考慮してくださり、この討論会を紹介された。
今回の討論会もそうだったが、学会の講演会と異なり、研究としてまとまっていない話題が多い。だから問題点が明確になる。面白い討論会である。また学会発表であれば聞きに行かないであろうテーマの講演もホテルに夜9時まで拘束されるので聞くことになる。
勉強の場として初めて参加したときにレベルの高さについて行けなかったが、門前の小僧習わぬお経を読む、のごとく、2回程参加したところ高分子の先端の話題を理解できるようになった(注)。門外漢には便利な討論会である。
ただ20年近く参加してきて感じていることは、アカデミアから新しい話題が無くなってきたことである。AFMの見直しや高分子の管モデルからの脱却、粗視化の工夫など温故知新的な取り組みには、期待できそうな香りがあったが。
環状高分子の精密合成のようなそれを研究して何に役立つのか分からないようなテーマと思われる講演もあった。ところが、20年近く聞いてきたので感動もしないと思われた環動高分子の基礎と応用で、環動高分子を微量添加したときの物性変化の話題が、このテーマと頭の中で結びつき、疑問に思っていたことが氷解し感動した。
科学の真理の中には、社会に役立つどのような機能に結びつくのか分からないものもある。だから基礎研究はもう不要というのは乱暴で、このテーマのように真理が確定したことで、それを活かすアイデアが生まれる場合がある。科学の研究にムダはない、といった物理学者がいたが、自然界の真理を確定する成果が出る限りにおいて恐らくそれは正しいのだろう。じっくり聞ける講演会の長所である。
(注)OCTAの世界を勉強できたのもこの講演会のおかげである。写真会社の後半の仕事に勉強の成果を活かすことができた。前半の仕事は、酸化スズゾルのパーコレーション転移制御のように「高分子」が無くても出せた成果が多い。
pagetop