2023.02/25 高純度SiCの前駆体
ポリエチルシリケートとフェノール樹脂とのリアクティブブレンドで製造される高純度SiCの前駆体は、昨日のポリウレタンの合成と同様に、ゲル化速度の制御が重要である。
ゲル化が均一に進行すれば問題は起きないが、不均一に進行するとシリカのドメインが大きくなった部分ができ、シリカとカーボンを不均一に混合した状態と同様の前駆体となる。
その結果、SiC化の反応が不均一に進行し、固相だけでなく気相の反応も生じてウィスカーが生成しやすくなる。
また、ゲル化速度が遅いと相分離が起きたりする。攪拌に成功し、反応の均一な進行に成功しても透明なポリエチルシリケートとフェノール樹脂が混合した液体が得られることがある。
そのまま放置しておくと、やはりシリカのドメインが大きくなった前駆体となることから、この反応条件のリアクティブブレンドでもゲル化速度が分子状のシリカ分散に重要であることが見えてくる。
前駆体中のSiOC結合をNMRで探ったが、検出できるほどの濃度ではなかった。前駆体を炭化してからフッ酸で処理してシリカを除去した後電子顕微鏡観察すると、シリカ2層分の厚みの運河のような模様ができているので、ほぼ分子レベルで均一にSiC化の反応が進行する条件が存在すると思われる。
高純度SiC製造用に最適な前駆体の反応条件について、フェノール樹脂の廃棄作業を行いながら調べた体験を紹介している。
その時データサイエンスにより、均一で半透明なゲルを短時間で見出しているが、廃棄すべきフェノール樹脂の量が多く、結局夕方まで楽しみながら実験を行っている。この楽しさは人生最後まで忘れられないほどの思い出となった。
カテゴリー : 高分子
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