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2023.05/28 技術が生まれた日(5)

ゴム会社で30年間続いた半導体治工具事業の基盤技術は高純度SiCの合成法にあり、有機高分子と無機高分子との均一なポリマーアロイを前駆体として用いるプロセスである。


この技術のコンセプトからその後類似の技術が無機高分子研究会の中で生まれているが、有機高分子を前駆体として用いてSiCセラミックスを製造する技術は、元東北大教授矢島先生が最初である。


しかし、この前駆体は高価であるがコストダウンも難しいポリマーだった。そこで安価なフェノール樹脂を前駆体に用いるアイデアを学生時代に思いついたが、技術として完成するまでにもう一つアイデアが必要だった。


なぜなら、フローリー・ハギンズ理論でχが大きい高分子混合体は均一に混ざらないからである。ゾルゲル法によるガラス合成技術が当時知られていたが、これは低分子のアルコキシドを用いる方法なので、そのまま転用できなかった。


フェノール樹脂とポリエチルシリケートを混合してもすぐに分離しゲル化するまで均一状態で安定ではないからである。形式知(フローリー・ハギンズ理論)により技術が否定され、それ以上考える気力が無くなっている。


科学者でも技術者でもこのような経験を誰でもするのだ。すなわち、良いアイデアを思いついても身に着けた形式知でそれを否定する経験である。


しかし、創造への意欲が勝ればそれをブレークスルーできるアイデアを絞り出すことができる。アイデアは突然閃く場合が多いが、閃くためにはそれなりの苦労が必要である。

カテゴリー : 一般

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