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2023.05/16 なぜ数理モデルが必要か

1980年から1990年にかけて高分子の緩和現象に対する科学的アプローチに変革が起きている。レオロジーについてダッシュポットとバネの数理モデルによる研究が否定されたのだ。


そして、20世紀末に当時名古屋大学教授土井先生をリーダーとしたOCTAプロジェクトにより高分子シミュレーターOCTAが登場している。


このOCTAは無料開放されており、高分子物理についてこのOCTAに実装されたライブラリーでシミュレーション可能である。ただし、OCTAでできるのは科学の形式知で明らかな現象だけである。


換言すれば、これから研究しようとする高分子物理について形式知による予測が可能だということを示している。ただし、このような予測はOCTAに限る必要は無く、現象の回帰や予測を多変量解析や、流行の機械学習で行っても良い。


もちろん過去に否定されたダッシュポットとバネのモデルを持ち出して技術開発を行っても良い。ただし、この時緩和現象の問題を知っているという前提である


ところで、マテリアルズインフォマティクスではディープラーニングばかりが注目されているが、タグチメソッド(TM)もマテリアルズインフォマティクスである。


基本機能とその制御因子はじめ調整因子など各因子の体系ができれば、企業の貴重なノウハウとなる。そして新技術を開発するときにそれを利用すれば、開発スピードが上がる。


モデルベース開発(MBD)が注目される理由の一つに開発スピードの向上がある。これがどのくらいスピードアップするのかというと、例えばPPS半導体ベルトの開発に5年以上かかっても歩留まり10%いかない状態だった。


コンパウンドのパーコレーション制御がうまくできていなかったためで、これをシミュレーションで問題解決した後に、中古の二軸混練機部品を買い集め工場建設後量産開始まで半年で歩留まり100%を実現している。


もちろんコンパウンド工場の最適化はTMで行っている。このようにMBDによる開発スピード向上は著しい。この他に弊社では豊富な事例を開示している。


試作段階で原因がわからず20ロット以上も無駄なコンパウンドを量産試作した結果を解析し、たった30分で問題解決した実績もある。


科学の形式知に忠実なOCTAのようなシミュレータだけでなく、独自の数理モデルによる予測や回帰、分類などをフロントローディングで実施し、最適条件を目標に技術開発を行うMDBの一番の特徴は、開発スピードが速くなる、という長所である。


開発成果が得られたならば、人材育成のためにゆっくりとそれを題材に研究を行う、というマネジメントも良い方法だ。答えが分かっているので研究もやりやすい。半導体治工具用高純度SiCの学位論文もそのような手順で完成している。

カテゴリー : 一般

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