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2023.07/13 傾斜機能材料

住友金属工業と始めた半導体治工具用高純度SiCの事業化を一人で推進しているときに、研究所を管理する役員が退職のため交代した。そして新しく役員になられた方から電気粘性流体の仕事も手伝うように指示された。


電気粘性流体に用いられている材料についてプロジェクトリーダーに情報を尋ねたら、外部との共同開発テーマであり、機密情報のため見せられない、と言われた。


仕方がないので、電気粘性流体に用いる粒子について独自に材料設計し、3種類の機能性粒子を発明した。前任の役員から「まず、モノ持ってこい」式のアジャイル開発マネジメントを指導されていたので、企画書を書く前に3種の機能性粒子を合成したのである。


大成功であり、実験を初めて1か月ほどで3種の機能性粒子の高い電気粘性効果が確認された。とりわけ、傾斜組成の効果で粒子内部から表面にかけて電気抵抗が10000倍変化している粒子は、極めて低電力で高い電気粘性効果が発揮された。


この成果で、それまで社外から調達していた粒子をこの新技術で内製化することになった。こうなってくると一人で推進するには荷が重い。そんな大変なときにFDを壊されたりする妨害を受けている。


住友金属工業との半導体治工具事業とこの傾斜機能粒子は、当方の置き土産のようになったが、転職後それらの展開を外部から眺めていて、高純度SiCの事業と電気粘性流体の進捗は人間の欲を描いたドラマをみているようだった。


どのようなドラマだったのか、いつかまとめて発表したいが、圧巻はこの仕事も含めて学会賞の審査員に小生が偶然選ばれていた、神様のいたずらのような出来事だろう。最初の推薦書は高純度SiCの仕事に無機材質研究所も住友金属工業も書かれていない、とんでもない内容だった。

カテゴリー : 一般

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