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2023.07/12 高分子と火災と評価技術(2)

火災は高分子にとって急激に進行する酸化反応だ。非平衡反応の科学の形式知について完成していないので、一般の火災をモデル化して実験室で科学的に研究を進め、科学的に満足できる解答を出すことができない。


また、多くの火災は出火原因を特定することも経験知に頼っており、現象をモデル化することすら難しい。それで建築研究所は時々実際に家一軒丸ごと燃やしてデータを取得し、それを基に研究を進めている。


大変お金のかかる研究だが、出火して燃え広がるまで消火もせずに黙々とビデオカメラに収めることなど一般の火災でできないからだ。半世紀前に比較すると火災に関する建築規格も大きく改訂されている。


それでもまだ見直しが続けられているのは、火災が無くならないからだ。すなわち火災に関する建築基準について完成することはないのではないかと思っている。


火災に関する研究が進んだので、最近建てられている家は震災があっても燃えにくくなっている。ヘーベルハウスのように30年以上前から独自基準で燃えにくい家を目指している企業もあるが、少しでも他社より燃えにくいことを示すことがセールスポイントになるからである。


科学的には燃えにくい序列を表現しにくいが、建築基準があるのでそれ以上の燃えにくさを実現していることをアピールしやすい。建築途中を見ていたが、台所周りの火災に対する配慮には感心した。


かつて台所用天井材の開発を行った経験があるが、某ハウスメーカーの意向によりコストダウンを優先し、当方のアイデアが却下された経験がある。火災の危険性を考慮したならばコストよりも火災対策の優位性をPRした方がハウスメーカーにとってメリットがあるように思い提案したのだが残念である。


その時代の規格が、科学的に普遍なレベルであれば、このハウスメーカーの考え方でも許されるかもしれないが、火災に関する規格は厳しくなることはあっても見直しで緩くなることはない。少しでも燃えにくい家を目指すことはハウスメーカーの良心である。ヘーベルハウスは少し高価だが。

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