2014.09/10 残念な結果
昨日早朝の全米オープン決勝戦は残念な結果だった。錦織選手有利の下馬評がはずれ、あっさりとストレート負け。試合後のインタビューでは、プレッシャーのため試合に入っていけなかった、と語っていた。
勝てる、と思っていても、あるいはデータ上有利と思われる状況でも、やってみなければ分からないのが勝負事である。特に実力差が紙一重の場合にはわずかな変調が勝敗に影響する。仮に圧倒的に実力差があったとしても、油断でひっくり返ることがある。
スポーツ大会(テニスシングルス)での優勝経験が一度だけあるが、決勝戦はプレッシャーとの戦いだった。ヘボなテニスプレーヤーでも、決勝戦ともなれば優勝がちらつき、身体が思うように動かない、という経験をする。しかし、相手も硬くなっていることに気がついてから、一方的に試合を進めることができた。
また、ゴム会社の地元の市民スポーツ大会ダブルスで毎年優勝していたペアと4回戦でぶつかったときには、最初から試合を投げて適当にやっていたら、面白いようにスマッシュやボレーが決まった。実力差がありすぎて結局は勝てなかったが、休日プレーヤーでもスポーツでは気持ち次第で実力以上の力が出たりする。
錦織選手の談話は素直に理解でき、次回ガンバレと声援を送りたくなった。スポーツでは、実力以外の要素が試合結果を左右するが、科学の世界ではスポーツのようなことは起こりにくい。STAP細胞の騒動は、もし現象が正しければその一例になるのだろうが、技術の世界ではスポーツ同様のことが起きる。
科学の世界では論理的にプロセスを進めることが前提になるが、技術では機能を実現できるならば、それが非論理的な成果であっても受け入れられるため、運の要素の入る余地がある。KKDにおける3番目の度胸(D)が重要視されるゆえんである。
ノーベル賞を受賞したiPS細胞でも、消去法というアミダクジ的実験プロセスや全てのDNAを細胞に組み込んで行うという大胆な度胸で技術ができあがり、科学的プロセスで現在研究が進められている。このあたりについて山中先生はノーベル賞受賞の時に謙遜して述べられていたが、ヒューマンプロセスの成果として自慢されても良い事例である。むしろ未来技術にヒューマンプロセスが重要な役割を担うことを世間に啓蒙できたかもしれない。
技術のこのような側面をゴム会社で学んだ。それ以来、運では無く意識的に度胸の結果が幸運を招くようなヒューマンプロセスのルールは無いのか、考え続けてきた。その過程で30歳の時に、無機材質研究所の電気炉が暴走して高純度SiCの独特な熱処理パターンを一発で見つける、という幸運に出会った。この経験で運と運以外のヒューマンプロセスの違いについて開眼した。
運による技術成果は、科学的に追試をしてもそれが得られた理由を論理的に説明できない場合が多い。しかしなぜか再現のロバストは高い、という経験則がある。運以外のヒューマンプロセスによる技術成果は発見に至るプロセスの科学的な追試も可能であり再現のロバストも高い。ご興味のある方はwww.miragiken.com をご覧ください。
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