2014.10/05 ROTELのアンプ(4)(良心的メーカーとは)
RA-1062が8年弱で壊れた。新しいアンプを買うかどうか悩んだ末、その道の専門家に尋ねてみた。今でもオーディオマニアは健在で、すぐにメールで返事をくれた。メールには、簡単なチェック方法と対応が書かれており、これで回復しなかったら素人には無理だから修理に出した方が良い、とあった。
今どき電気製品を修理してくれるメーカーがあるのか、と驚いて、どこへ修理に出すのか尋ねた。しばらくして、ROTEL商事の新しい住所を知らせてくれた。実は古いカタログや保証書に書かれたところへ電話しても、連絡できなかったのだ。また、秋葉原のラジオ会館はこの9月に新館がオープンしたが、そこに丸山無線は無かった。2011年にラジオ会館が改築のため壊されたが、その時丸山無線はどこへ移転するのか案内が無かった。
1979年にゴム会社へ就職し、研究所へ配属されてから良く通ったのがラジオ会館始め秋葉原の駅近くの電気街である。MZ80Kの周辺機器や、PC9801、DOS/V部品など写真会社でリストラされるまでよく通った。リストラされた後、豊川へ運良く単身赴任できるまで秋葉原から足が遠のいた。それがマニアに勧められてROTELのアンプを買うために秋葉原へ行き、数年で大きく変貌した秋葉原にびっくりした。メイド姿のお姉さんから声をかけられ自分のいる場所が異次元空間のような気がした。
変貌した秋葉原の姿のため、アンプを購入後ますます秋葉原から足が遠のいた。上京したころは、ハム関係の機器が多かったが、それがだんだんパソコン関係に変わり、いつの間にかメイド姿のお姉さんが闊歩する町に変わった。年月の経つのは早いが、秋葉原という町はそのスピードに合わせて変化する街のようだ。
マニアが知らせてくれたROTEL商事の新住所は目黒区になっていた。久しぶりに秋葉原を歩いてみようと思っていたが、電気街と無関係の目黒区の住所に少し驚いた。とりあえず電話をかけたところ、修理するから宅急便で送って欲しいという。今すぐ車で届けると言ったら、事務所に誰もいないことがあるから、宅急便が良い、と言われた。
ホコリで汚れたアンプの外側を簡単に拭き取り、宅急便で壊れたアンプを送ったところ、3日めに修理されきれいになって返ってきた。ところが新品ではなく、シリアルナンバーから修理を依頼したアンプであることを確認できた。箱の中には請求書と手紙が入っていた。手紙を読むと、秋葉原のラジオ会館5階のインパルスという店でROTEL製品を扱っているという知らせと、今回は無償でかまいません、と手書きで書かれていた。請求書を見ると、技術メンテナンス料12000円に斜線が引かれ、0円となっていた。
この30年間で始めての体験である。今どき保証期間を過ぎた製品を無償で修理してくれるメーカーがあるとは思わなかった。かつてパソコン用スピーカーが保証期間ではあるが、当方の不手際でスピーカーコーンにキズをつけたことがある。そのとき有償で構わないから、との手紙をそえて送ったところ、修理品ではなく新品が送られ、製品の定価の半額の請求書が同封されていた。秋葉原で4割引きで購入した製品だったので心境は複雑だった。
マニアに聞くと高級オーディオの世界では当たり前だと言われた。しかし保証期間を過ぎても無償というのは初めてだ、とも言われた。8年弱掃除もしないでホコリで汚れたアンプの掃除代だけでも数千円は必要だろうとも。ただ、今回の出来事で工業製品が壊れたら修理をしないで廃棄するという習慣になれてしまっている自分に気がついた。メーカーが1品1品大切に消費者に届けている、という観点で工業製品を眺めたときに、修理がきく場合には、修理してユーザーに戻す姿勢こそ経済性を無視すれば正しい。
たかが趣味の世界の商品での出来事だったが、メーカーの良心とは何かを考える良い機会であった。WEBを少し調べてみたら、すでに廃業して無くなったサンスイのアンプをつい最近までメンテナンスする会社があった、という話が紹介されていた。電気製品壊れたらすぐ廃棄、という習慣は、経済性の観点で有利かもしれないが、地球環境の視点でオーディオという趣味の世界のメーカーの姿勢を模範とすべきだろう。
カテゴリー : 一般
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