2014.12/21 高分子の難燃化と評価技術(5)
3日前に、高分子材料の難燃化と評価法についてその概略を述べたが、高分子材料の用途とその設計方針が最初に必要である。高分子材料の用途が決まると、その分野における難燃性規格が材料開発時に使用する品質評価法の一つとして決まる。設計方針とは後述するコンセプトのことであるが、難燃性規格を合格するためのコンセプトも許される。
規格を通過するためだけのコンセプトで材料開発する、というと科学的でもなくいかがわしささえ感じる読者もいるかもしれないが、難燃化規格が用途と実火災を考慮して開発されているはずなので、技術的には賢明な方法となる。
今となっては笑い話となるが、30年以上前にJIS難燃2級という建築材料向けの欠陥評価法があり、この評価法に合格するためにもちのように膨らみ変形する材料が開発された。サンプルを試験装置に取り付け試験を開始すると、炎から逃げるように高分子発泡体が膨れ、その結果、煙も出なければ燃焼による発熱も無く試験が終わる。
このような材料が市場に出た結果、耐火建築でも簡単に燃えるという事件が発生し、規格の見直しが叫ばれ、簡易耐火試験が建築基準として採用されるにいたった。筆者が技術者としてスタートした頃であり、当時の通産省建築研究所の先生方と規格の見直しのお手伝いをしたが、これは高分子の難燃化「技術」の重要性を学ぶ機会となった。
当時の上司は、材料が炎から逃げるように設計しているので、溶融型と同様の難燃材料の設計方法の一つ、と自慢していたが、溶融型では、溶融するときの吸熱効果で火を消す機能を発揮しているのである。
材料に足が生えていて逃げ出すのならともかく、燃焼試験装置の炎を避けるように変形するだけでは難燃建築材料ととして不適格であると同時に、そのような材料を合格とする評価試験法にも建築基準としての欠陥があった。
また、技術では、自然現象から生活に必要な「機能」を取り出し、それをロバスト高く再現できることが求められる。餅のようにふくれ、特定の炎だけを避ける機能では、材料に火がついたときの問題を解決できないので、建築用難燃材料の機能として不十分である。
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