2015.01/05 混練プロセス(1)
ゴム会社で3ケ月間防振ゴムの開発を担当した。新入社員のテーマとして一年間担当する予定のテーマだったが、サービス残業を行い3ケ月間で処方を仕上げた。指導社員が極めて熱意のある優秀な技術者で毎日最低2時間は混練技術の指導を現場でしてくださった。
物理が専門の技術者で一年間に得られるであろう重要なデータをすべてシミュレーションで示し、その内容を1週間かけて講義してくださった。研究の進め方について大学と企業の違いを知り、カルチャーショックのような衝撃を受け、駄馬の先走り状態になった。
この頃を思い出してみると技術者として最も充実していた。高純度SiCの仕事もそれなりに充実していたが、それは事業家としての充実感であり、技術者としては満たされない毎日だった。吸収した知識をすぐに実戦に生かす技術者としての醍醐味は防振ゴム開発の仕事ほどではなかった。
STAP細胞の騒動では未熟な研究者が指導者に恵まれなかった発言をしていたが、技術の伝承において優れた指導者は必須である。科学の知識は書物から学ぶことができるが、技術は書物だけで学ぶのは難しい。混練プロセスのような科学で解明が遅れている分野ではなおさらである。
指導社員はゴム会社であまり大切に処遇されていなかったが、実務者としての力量と技術の伝承者としての力量はずば抜けていた人である。部下の立場で評価すれば100点であったが、その上司の立場から見た時に高い評価を受けていなかった、と思われる。
サラリーマン人生を振り返ると、この指導社員より優秀な技術者には出会っていない。この指導社員の実務スタイルが、3ケ月の業務を終えた時に当方の目標になっていた。
たった3ケ月間混練プロセスを担当しただけであるが、優れた指導者のおかげで得意な技術分野の一つになった。35年前短期間に獲得した知識と技術で9年前中間転写ベルト用コンパウンド工場をやはり短期間に立ち上げることができた。
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