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2015.01/30 混練プロセス(25)

(昨日の続き)単身赴任してテーマの問題点を整理してみたが、へたくそなモグラたたきをしている状況だった。モグラが頭を出していないのに一生懸命ハンマーを振り回していた。すなわちモグラは混練プロセスにいるのに押出プロセスでモグラたたきをしていたのである。

 

コンパウンドメーカーは、そこでモグラが暴れまわっているのにモグラを見ようともせず、押出プロセスにモグラが走って行った、と騒いでいるだけだった。コンパウンドメーカーにモグラ用の罠を提案してもモグラを捕まえた経験のないものは黙っとれ、と相手にしてくれない。

 

部下のマネージャーはPPSベルトの電子顕微鏡写真をいっぱい集めてモグラを探していた。電子顕微鏡写真というのは大変狭い領域を見ていることに気がついていない。コンパウンドの解析データを尋ねたら、ベルトの写真と変わらなかったのでベルトを中心に問題の原因を解析している、という。いくら見える化しても見えない人には、あるいは見ようとしない人には無駄である、という典型的な状況だった。

 

たまたま単身赴任した同じ時期に、ゴムベルトの押出をやっていた、という若者が転職してきた。ベルトが嫌でこの会社に来たのにまたベルトをやることになってがっかりした、と言っていたのでコンパウンドを担当させることにした。

 

粘弾性測定装置を用いた様々の測定法を指導し、コンパウンドの粘弾性について解析させた。マネージャーは開発しているのは中間転写ベルトなので力学特性ではなく電気特性の評価が重要ではないか、と仕事の進め方について疑問をぶつけてきたが、力学特性と電気特性との強相関性を講義し煙に巻いた。

 

30年前に、ゴム会社の指導社員から高分子物性に関して高次構造との相関があれば事象の異なる特性も相関するという面白い現象が起きる、と習った。目標を達成した中間転写ベルトの材料ではそれが起きるはずである、と想像した。また、粘弾性評価という巨視的な材料評価は、コンパウンドの混錬の状態を観察するのに適した方法である。

 

高分子材料では解析目的に適したサイズをまず決めなければいけない。導電性微粒子と絶縁体の複合材料において、導電性はパーコレーション転移という現象で決定される。最も小さい領域は、微粒子界面の現象で、接触点の一点は大変小さいが導電性微粒子同士にわずかな接触があればホッピング伝導領域も含め微粒子サイズレベルよりも大きなサイズとなる。

 

すなわち電子顕微鏡で求めることができるのは、微粒子の集合体であるクラスターの大きさ程度で、クラスターの分散状態やその状態から生じる現象を見るためには、もう少し大きな領域を見る必要がある。粘弾性評価を工夫すると、その領域で引き起こされる現象を観察することが可能となる。粘弾性評価装置は動的弾性率を求めるだけの装置ではないのだ。

 

カテゴリー : 高分子

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