2015.02/05 混錬プロセス(31)バンバリーの使い方
コンパウンドの内製化は転職してきた若者と中国人の留学生に担当させた。しかし、その前段階は、外部でバンバリーを借りて実験し、内製化の成功確率を高める努力をした。この時中堅のスタッフと二人で仕事をやっていたのだが、早い段階で中堅のスタッフから異動希望が出たので一人で進めることになった。
やめたくなくなる理由は分かっていた。バンバリー作業は汚れ作業であり、仕事もその成果が事業に結びつくと思えない状況だったからだ。高分子の高次構造制御で、と言ってみても中堅であればQMSの仕組みを理解して仕事を行っている。仮に面白い仕事ではあっても、業務成果を優先して考えるものだ。
ものすごいイノベーションを起こせる、と説得する道もあったが、当方もデータがなく仕事の位置づけをよく理解していたので、この担当者の気持ちはよくわかり、すぐに人事異動の手続きをとった。
このような場合に異動を躊躇する管理職がいるが、対象が中堅ならばその希望をすぐにかなえてやるべきで、上司の立場を優先してはいけない。その人の会社における将来がある。そこを考えてあげなければいけない。このような場合に中堅ならば具体的な異動先を本人がすでに決めている場合が多い。
バンバリーはおよそ研究開発の道具に思えない、おおざっぱでいい加減な設備である。中堅社員はそのあたりについても苦情を言っていた。全体像を示し研究のための実験といくら説明してみてもだめだった。運転しているのが本人なので、いい加減さを毎回体感し、製品に結び付くと実感できないのだ。そのあたりは、ゴム社会でバンバリーがノンプロ練と位置付けられているゆえんでもある。
注意しなければいけないのは、作業手順も含め誤差因子の大きなバンバリーでその誤差の影響が小さい系もあったり、二軸混練機の実験に慣れていると誤差の影響が大きく出る系を扱ったときにビックリするのである。
いつでもバンバリーは作業手順も含めた誤差の大きいプロセス装置であることを容認すべきである。このような装置で一定値が得られた場合には、それこそ本当にビックリしなければいけない。それはプロセスよりも材料の性質の寄与が大きい系である。
ブルーレイ用光学樹脂レンズのテーマを担当したばかりのころ、バンバリーを使い混練実験を行ったところ、ポリオレフィンの自由体積の量が一定になったデータが得られたときにはビックリした。そして、その時の条件からその材料を使っていては耐久性の高い樹脂レンズができないと判断した(ご興味のある方は問い合わせていただきたい)。
さてバンバリーの運転の仕方であるが、これには決まりがない、ということが教科書には書かれていない。ロバストが高く物性の良い混練物が得られればその運転方法でよいのである。バカとハサミは使いよう、と言われているが、ハサミの代わりにバンバリーとしてもよいぐらいである。
カーボンを分散するゴムでは、バンバリーだけで混練を完成させることは稀である。バンバリーのあとはプロ練と呼ばれるロール混練で仕上げる。バンバリーだけで混練を完成できないのは、バンバリーで到達できるカーボンの分散粒径が大きいからだ。ロール混練を行うことにより高次構造のサイズは小さくなる。
カテゴリー : 高分子
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