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2023.10/16 藤井式仕事の方法

当方が単身赴任を決めたのは、PPSと6ナイロン、カーボンの配合による国内トップメーカーT社設計のコンパウンドに問題があるが、T社ならば当方のアイデアでそれを克服でき、必ず半導体無端ベルトの押出成形歩留まりが10倍近くに上がると確信したからである。


この確信を得るためにデータサイエンスを用いている。すなわち6年間の開発で得られたデータを整理して、問題点を明確にするとともにその解決策まで読み切っていた。


ただ、手段が非科学的であるというリスクがあった。非科学的であるが技術として成立するという考え方をT社ができるかどうかにかかっていた。


単身赴任して最初のプロジェクト会議で、コンパウンドの配合を変更せず問題解決するには、カオス混合しかない、と提案したところ、「素人は黙っとれ、押出成形の技術ができていないだけだ」とT社から委託されてコンパウンドを生産していた会社の技術サービス部長から言われた。それだけではない。勝手に自分で工場でも作って生産しろ、とまで言われている。


T社もそれに同意しただけでなく、当方の部下の課長からも「倉地さん、ここは私がうまくやりますから挨拶だけにしてください」と言われてしまった。確かに会議の雰囲気から常識的な部下ならば、誰もがそう発言するだろうと納得し、議事録に残すことを条件にその場から当方は消えた。


そして、すぐにカオス混合プラントを建設するための仕事に切り替え、一気に駒を進め、3か月でプロントを建設するや否や、配合組成が全く変わっていない新たなコンパウンドで成形歩留まりを100%にすることに成功した。


T社が受け入れなかった時にどうするのか、すべて読み切って成功するための計画を立てていた。すなわち、事前の戦略戦術をしっかりと立て、リスクの高い戦術を選ばなくてはいけない時には、迷うことなく一気にそれを進め成功させるやり方こそ藤井式仕事の方法である。弊社の研究開発必勝法と同じである。


ちなみにT社としては原材料のすべての供給先が変わっただけなので損をしていない。その後T社からは10件ほどカオス混合の特許出願が行われている。


ただし、半導体無端ベルト開発のために当方が用いたマテリアルズインフォマティクスの方法については、まだ公開していない。理由は、未公開データで解析していたことや、まだ学会発表等が行われていないためである。当方が行った検討結果については、当時学会発表も行い、さらには高分子学会から招待講演もうけているので特許データを用いてセミナーで説明を行っている。カオス混合については、1970年代にはすでに知られていた技術でゴム会社に入社し指導社員から教えていただいた。そのレオロジー的解釈とシミュレーションに成功したのは、2000年前後であり、当方のゴム会社における指導社員の出身研究室から行われている。

カテゴリー : 一般

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