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2015.06/12 私のドラッカー(8)

米大リーグのレンジャーズを自由契約になった藤川球児投手が、推定一億円の提示をした阪神を蹴ってローカル球団の高知ファイティングドッグスに入団したニュースには続きがあり、その球団社長が無給という条件であることを明かした。

 

藤川球児投手はブログで「僕と妻の生まれ故郷の高知で、未来のスーパースターになるチャンスを持った子供達に僕が投げる姿を見てもらって今後の夢に繋げて貰いたい!」と思いを綴っているが、本音は、以前語っていた「自分を必要とするところで投げたい」と判断しての意志決定だろう。

 

シーズン途中であるが現在の阪神の中継ぎに藤川投手が加われば、と思ったのは当方だけではないだろう。しかし、藤川投手が肘の手術をしたことについて、阪神内部で心配している人たちがいる、とかねてから新聞報道されていた。

 

藤川投手が二流あるいは自己責任感の無い投手だったなら、そのような意見があったとしても球団の意志決定である一億円のオファーを受け入れたかもしれない。しかし、彼は一億円よりもプロの投手としての自己責任感からあっぱれな意志決定をした。

 

彼は、まだ若く、数年はスタープレーヤーとして活躍できるはずで、それを本人も自覚していると思う。一億円という金額を安いと判断したのかどうか、という議論が無意味であることはローカルリーグで無給という球団社長の発言から理解できる。

 

彼は、腐っても鯛になる道を選んだのである。実は大学を卒業した知識労働者も藤川投手のような意志決定をしなければいけない、とドラッカーは述べている。そうしなければ高い成果を上げられない、と断言している。

 

すなわち「農民が何をいかに行うかは代々伝えられていた。職人は仕事の中身、手順、基準についてギルドの定めがあった。今日組織に働く人たちは何も教えてもらえない。」と「断絶の時代」(1968)に書かれているように、知識労働者は藤川投手のようなプロ意識を持って自ら考え組織に貢献しなければいけないのである(注)。

 

「断絶の時代」(1968)P.F.ドラッカー(上田惇生訳)より
「今日組織に働く人たちは何も教えてもらえない。自ら意志決定を行わなければならない。さもなければ成果をあげられない。何事も成し遂げられずいかなる成功も収められない。」

 
 

(注)本来大卒以上の知識労働者は、組織に入るやいなや即戦力として活動できなければいけない時代である。しかし、大学にそのような準備と体制ができていない。科学の水準が高くて即戦力は無理だ、と言っていた大学の先生を知っているが、この発言は大学の使命を忘れた発言である。今大学教育で欠けているのは、「技術者」教育である。日本の教育カリキュラムにおいて、「技術」を取り入れている学校は少ない。そもそも科学と技術はイノベーションを引き起こす車の両輪のはずなのに「技術とは何か」という哲学科目さえ大学に存在しない。当方はゴム会社の新入社員研修で「技術」哲学を初めて習った。それはきわめて新鮮だった。花冠大学には未来技術研究所があり、そこで少し技術について女子大生が議論している(www.miragiken.com)。技術を扱っている珍しい大学である。

カテゴリー : 一般

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