2015.06/25 科学と技術(5)
これは自慢話になってしまうかもしれないが、昨日のひしゃく作業については、マネージャーとして現場で意志決定し、ただそれだけで問題解決した事例である。開発された技術を製造現場へ移管するときの移管作業は慎重に行わなければ痛い目に遭う。
昨日の話で4-5回に1回不良品が発生する、と書いたのは正確ではなく、正しくは、生産立ち上げ時には、2-3回に1回だったのが、4-5回に1回、と変化した現象である。おそらく放っておけばエラーはなくなるのではないか、と思ったぐらいである。
最初にエラーが発生したときに、開発をやり直すかどうか、品質会議でもめた。しかし、田口先生に直接ご指導を頂いたロバストの高い技術である、と言って会議をしのいだ。2回目にエラーが発生し、開催された品質会議では、前回は2回だったのが、今回は3回成功した後のエラーであり、現場でミスが発生したのでは、と押し切った。
しかし、その後もエラーが発生し、廃棄に伴う費用が、製造原価を押し上げる問題となり、製造部門から、重要コストダウンテーマと名前を変えて、開発へテーマ依頼してきた。このような科学的に解明が難しいテーマを引き受けると大変である。また、タグチメソッドで最適化していたために実験室でエラーの再現ができないので因子を見つけることができない。
テーマを引き受ける前に、現場を見させて欲しい、と申し出て、自ら現場観察を繰り返した。不思議なことに生産立ち上げ時には2-3回だったのが、5回続けて生産してもエラーが発生しないこともある。製造部長に何も問題ないではないか、と言ったら、いや、3-4回の頻度だから明日は必ずエラーが出る、と主張した。ところが翌日の生産状況を観察したところ、製造部長の主張むなしく、エラーは発生しなかった。(明日に続く)
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