2015.07/04 ポリカーボネートの問題(昨日の続き)
これは6月末に参加した高分子自由討論会で勉強した結果であるが、ポリカーボネートという樹脂は高分子のからみあいが原因で面白い特性が観察されるという。T大O教授の講演であるが、当方も昨日紹介したいきさつがあり、ご発表といくつか一致するデータを持っていた。
この先生のご発表は実務に直結する話題が多く、高分子自由討論会の楽しみの一つである。発表内容含めここで書くわけにはいかないので、ご興味のある方は弊社へ問い合わせていただくか、来年度参加されてはいかが?まことに自由な討論会で楽しい。参加費も巷のセミナー費よりも安い。
さて、この先生のご発表を公開するわけにはいかないが、以下は受け売りであることを前提に読んでいただきたい。早い話が当方のこれまで悶々としていた問題を明快に解いてくださったその結果を当方の責任で書く。
まず、PCの難燃化について。一部のPCを除き、PCの難燃性は高く難燃剤を添加しなくとも自己消火性を示す。しかし、これがポリマーアロイになると難燃剤が必要になる。ところが混練条件により難燃性が変化するのである。PCマトリックスにおける難燃剤の分散状態が変わるため、と予想していたが、「なぜ」が分かっていなかった。
難燃剤の分散状態にPCの絡み合い密度が関係している可能性があり、混練条件によりそれが変化するため、と勝手な想像をしてみた。昨年行った実験結果を見てみると、その傾向が出ていた。この絡み合い密度の問題は難燃剤の分散状態に影響があるだけではない。
射出成形性にも影響がでる。これは極端なサンプル比較を行うとわかりやすい。例えばカオス混合を行ったPC/ABSと行わなかったPC/ABSでは、前者の方が射出成形のOWが広くなる。これは、粘弾性の周波数分散を見ても理解できるが、O教授の考察を拝借すれば見事に説明できる。
科学は技術開発で遭遇する現象を解明してくれる。科学において技術とは全く異なる実験の場で出されたデータとその考察を技術開発の現場で用いることができるのは、真理が一つという信頼があるからである。
カテゴリー : 高分子
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