2012.10/31 ISO9001が無かった時代
なにもかも標準化やマニュアル化の時代ですが、企業のマネジメントシステムも標準化されてISO9001としてまとめられており、多くの優良企業は取得しています。マネジメントシステムが標準化されると日々の仕事にも影響が出ます。ゆえに取得時にはある程度の融通性を残しつつ取得できるぎりぎりのところで標準化を担当者は考えますが、それでも取得後は不自由が残ります。もちろん標準化は品質向上の為であり、業務の品質は上がっています。特に新しい職場へ異動した時などはこのシステムのおかげですぐに仕事に着手できるメリットは大きいです。
20年以上前の話です。高純度SiCの新規合成法を発明し、先行投資を受け1階がパイロットプラントで2階が実験室の研究所を設立していただき、セラミックスフィーバーの中へ華々しくデビューしたのですが、マーケティングをしてみますと、半導体市場で高純度SiCのニーズはありませんでした。エンジニアリングセラミックスの分野に僅かにニーズがあり、サンプル提供したりしましたが、6年間は事業にならず、後半2年間はテーマの予算すら無くなりました。
仕方がないので、文部省の科研費にぶら下がったりしましたが、ネズミの涙程度であり仕事を進めることができません。予算がなくなる前から続けてきた新テーマ企画活動の予算で食いつなぐことにも限界があります。当時の管理部長が見かねて、研究所の予算で消化率の悪いところの予算を使ってよい、とありがたい言葉をかけてくださいました。もともと研究所の予算は期末消化型で期初は予算が潤沢です。管理部長の指示は研究所の予算消化を平準化することに成功し、高純度SiC技術開発の継続も可能となりました。この絶妙なマネジメントのおかげで住友金属工業とのJV立ち上げ、本命の半導体用高純度SiC開発へと移ってゆくのですが、もしISO9001を取得していたならば実現できなかった采配です。
標準化は品質向上など多くのメリットがありますが、標準化により失われるものがあることを十分に理解しておかないと品質は向上しました、しかし新しい技術の芽は出なくなりました、というようなことが起きかねません。また、社外との接点である調達部門の標準化は社外の取引先への影響も出ます。ビジネスプロセスの標準化と同時に標準化で失われるヒューマンプロセスの問題を考慮する必要もあるのではないでしょうか。
カテゴリー : 一般
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