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2015.08/22 混練

身の回りにある高分子材料には必ず何か添加剤が入っている。高分子合成段階に添加剤も一緒に混合する方法もあるが、多くは混練機で添加剤を高分子に混練する。
 
二種以上の高分子を混ぜるときには必ず混練プロセスが必要になるが、この混練技術について誤解が多い。例えば、未だ科学で完全に解明された混練プロセスは存在しない、という事実でさえも否定する人がいる。
 
これはゴム会社を定年で退職した同期の技術者に聞いた話だが、ようやくロール混練について80%ほど科学的に解明できたところだ、とのこと。バンバリ-については未だ藪の中だそうだ(注1)。
 
だから混練について書かれた書籍は、非科学的内容と受け止めながら読む必要があるが、科学的に断定して書かれている論文に遭遇すると誤解が生まれるのも仕方がないとため息がでてしまう。
 
混練について書かれた論文を読むときにはこのような考え方もある、というぐらいの心構えが必要である。それでは、混練技術を理解するための基礎は何か、と問われるとレオロジーという抽象的な回答になる。
 
混練プロセスでは、伸張流動と剪断流動が起きており、この組み合わせで混練が進む、というのが一般的な考え方だ。そして少し古い論文には、剪断流動では細かく分散できる粒径に限界があり、ナノオーダーまで分散するには伸張流動が有利である、と書かれている。
 
しかし、2000年頃に行われた高分子精密制御プロジェクトで、高速剪断流動でナノオーダーまで高分子が分散されることも示された(注2)。すなわち過去に書かれていた剪断流動の話は混練プロセスにおけるスクリューの回転速度の範囲では、という条件付きで読む必要がある。
 
(注1)昔は闇の中、と言われたので少しは進歩した。
(注2)あの技術は分子量低下が起きているからだめな研究だ、と批判していた人がいたが、分子量低下が起きていてもナノオーダーまで分散している、という見方が実践知による見方である。なぜ500回転前後の二軸混練機で剪断流動を中心とした混練でナノオーダーまでゆかないのか、と疑問を持つことは重要である。そして1000回転以上でナノオーダーまで混練が剪断流動で進むという実践知が生まれている。ここで問題になるのは、せっかく有用な知が生まれても、実験結果に科学的な厳密性が欠けている部分をみつけ、知の全てを非科学的と否定することである。混練では少しの条件変動で興味深い結果が生まれたりすることがある。それらをどのように扱うかで技術の蓄積量が変わる。

カテゴリー : 一般 高分子

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