2015.08/26 カオス混合
カオス混合は30年以上前に指導社員から教えていただいた混練技術である。彼の説明ではロール混練でそれが起きている、という。そしてその機構をバッチ式ではなく連続式で実現したら混練技術に革新をもたらす、と教えてくれた。そしてその実現が当方の宿題となった。
その後ポリウレタンやフェノール樹脂の難燃化というテーマからセラミックスへ仕事がかわり、カオス混合を考える機会が無くなった。しかし、カオスを混合したらどのようになるのだろうと、酒を飲みながら話のネタにはしていた。
以前紹介したが、退職前の単身赴任の時に偶然その技術開発を行うことになった。人生とは面白いもので、思い続けているとそれがかなうことがある。カオス混合はいつかやってみたいと思い続けてきた技術の一つだ。
思い続けてきたが、ストーカーのように追い続けてきたわけではない。学会で関係する発表があれば、それを聴いてみる、という程度である。印象に残っているのは、日本化学会で発表のあったラテックス粒子の自己組織化現象である。
ラテックスが一層流れる程度の薄いスリットの中にラテックスを流すと規則正しく粒子がならぶという報告である。溶融した高分子の粘性流体をそのような細いスリットに流すことは不可能だが、ロール混練の条件に合わせたスリットへ急速に流したらどうなるか、というアイデアが生まれた。
アイデアが生まれたがそれを実施するまで10年近く月日が流れた。運良くカオス混合を開発できるテーマが目の前に現れた。そして、単身赴任した開発現場には、それをモデル的に確認できる環境が整っていた。
カオス状態とは混沌としたものだが、問題がうまく解決されるときというのは、不思議なことにとんとん拍子に進む。人生全体はカオスのようなものかもしれないが、その一瞬一瞬というのは、努力の積み重ねた結果が現れるのではないか、と思うようになった。
だから苦労しているときには、なおいっそう真摯に努力に励まなければいけないのだろう。長期的視野では、努力は必ず報われると信じたくなる、そんな人生である。