2024.01/06 飛行機は燃えやすくなったのか
今回の羽田の事故機エアバスA350は、カーボンファイバーの複合素材で作られているそうだ。商用機として今回が初めての火災、との情報もある。驚いたのは、消火活動に関わらず丸焼けになってしまったことだ。
着陸から18分で全員避難できているが、20分後には機内に炎や煙が充満していた。また、最初の避難口が開くまでに着陸から5分以上かかっているが、これは安全確認のために必要な時間だったそうだ。
専門家の説明によれば、カーボンファイバー製の商用機として、客室に火の廻るのが遅く、設計が成功していたそうである。
家屋の火災を幾つか見てきた経験からすると、飛行機ならばもう少し火災に対する対策の工夫が必要、と今回の事故を見て思った。すなわち、火災に対する設計品質をまだ高められる余地がある(補足)。
但し、炎の様子から今回1000℃前後(カーボンファイバーの燃え方や炎の色から800℃をはるかに超えていた。)まで温度の上がったところがありそうで、恐らく金属でも耐えられなかった可能性がある。しかし、金属ならば消火活動におけるあのような燃焼の仕方をしなかったはずである。
日本家屋の耐火性については、数年に一度実際に家1件を燃やして研究を重ねてきた歴史がある。建築研究所の努力の賜物だが、航空機もそのような実験を行う必要が出てきたのではないか。
素材の改良には時間が必要だが、今回の事故で幾つかすぐに改善した方が良い点が見つかった。その一つは、事故で乗客スタッフ間の連絡ができなくなった点である。
少なくとも機長室とはワイヤレスフォンでつなぐべきではないか。今時断線で連絡ができませんでした、というのは時代遅れである。
次に内部から外部の状況確認に時間がかかっていたようで、公開された映像からも外部の安全確認の難しさを理解できた。これは、非常口にワイヤレスカメラを1基づつ搭載することで改善できるのではないだろうか。
外部の安全確認を携帯電話で確認できるようにするカイゼンは今ならコストはかからないはずである。おそらく機体を軽くするために樹脂材料が多数使用されるようになったと思われるが、樹脂材料の不燃化は困難であり、せいぜい燃焼速度を遅延させ、自己消火性にできる程度(注)である。
しかし、ハードウェアーで安全性を高めることはDXの進展でコストが下がったので、今回の事故を教訓に新たな技術をすぐに導入すべきである。
(補足)映像から材質と構造の組み合わせ特許を出願可能と思っています。関心のあるかたは問い合わせていただきたい。飛行機の専門家は十分な難燃性があった、とのコメントがほとんどであるが、信頼性あるいは安全性の観点では、改善の余地が残っていることを示唆する燃焼挙動だった。50年近く前に専門家の見解として十分な難燃性があると太鼓判の推された天井材が実火災で機能せず簡単に燃えてしまう事件が多発し、建築基準の見直しが行われ、入社配属されたばかりの当方はひどい目に遭った記憶を思い出した。
(注)今回の燃焼の様子を見ていると、随所にUL94-5Vb以上の素材が使用されていたように思われる。ゆえに客室への火の周りが20分以上かかり、安全が確保されていたのだろう。建築には建築用の、飛行機には飛行機用の難燃化基準が存在するが、今回の火災を見る限り、その基準の見直しが必要に感じている。例えば最近の耐火建築は、木造でも大変燃えにくくなっている。木造ではないがヘーベルハウスは耐火建築として優れている設計であり、飛行機もこのレベルを目指すべきではないか。
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