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2015.10/02 企画という仕事

技術者や研究者に限らず、企業で商品企画を希望する若い人は多い。技術者や研究者の場合には、商品企画に必要な技術開発を担当した時に、さらに詳細な内容を詰めるために技術企画あるいは研究企画を行う機会が多々ある。
 
仮に他の人の仕事を引き継いだ時でさえも、前任者の業務計画をそのまま行わないほうが良いので、その機会となる。前任者の企画を見直した結果、それをそのまま踏襲する,ということになるかもしれないが、それでも前任者の業務について見直しの作業で企画のような仕事を必ず行う機会ができる。
 
少なくとも当方は32年間の技術者生活で企画という仕事をこのようにとらえてきた。すなわち技術者や研究者は、全員が企画マンであるというのが当方の考え方で、これはゴム会社で出会った指導社員にご指導していただいた重要な考え方の一つである。日々企画マンのマインドであれば、実際に初めて商品企画するときにもそのためのスキル獲得は容易となる。
 
ゆえに技術者や研究者でわざわざ企画をやりたい、という人はいないと思っていたら、写真会社へ転職して研究管理の主任研究員を任されたときに、その部屋へ研究員の若い女性が企画を担当させてくださいと飛び込んできた。
 
転職したばかりで部下がいなかったので、その女性は当方の魅力にひかれて来たのだろう、と誤解もしたが、話を聞いてみると彼女が企画という業務に対してそれよりも大きな誤解をしていることに気がついた。
 
さっそくゴム会社の指導社員が新入社員の当方を指導してくれたようにコーチングをしたら、この会社はそのような会社ではない、と怒り出した。転職したばかりなので訳が分からなかったが、話を聴いているうちに、要は若い研究員は言われたことだけを仕事として行うように決められているというのだ。
 
この時の話はもう少し説明しなければいけないかもしれないが、たとえ彼女がそのように主張しても、当時小生が彼女にアドバイスしたことは、日々企画マンたれ、という一語だけだった。もしフォルクスワーゲンの技術者が、このような心構えだったなら、不正プログラムの技術で上市することが決まった時に、その技術をランニングチェンジするための企画を提案し、実行を試みた人が現れたかもしれない。
 
上司が企画できないならば、担当者レベルで対抗企画を提案できるような技術開発の現場なり土壌を作っておきたい。ゴム会社の研究所はそのような風土であった。セラミックスフィーバーの吹き荒れた1980年代、ここはゴム会社だ、何もしないというマネジメントもある、と迷言を言われ、社長の方針さえ軽く無視した上司がいた。
 
しかし、入社3年目で高純度SiCの企画を提案し、紆余曲折があったが、それが30年近く事業として続いている。フォルクスワーゲン社の技術開発の現場もそうであったなら、長い間不正を放置しておくことにはならなかった、と想像している。

カテゴリー : 一般

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