2015.10/06 中国人初のノーベル医学生理学賞
ノーベル医学生理学賞を大村智・北里大特別栄誉教授が受賞した。日本人として誇らしくうれしいニュースである。昨晩からTPPの合意とセットでニュースが報じられている。セットとしてはやや違和感があるが、昨日は二つもビッグニュースが重なったので仕方がない。
大村博士については、新聞各紙に報じられているので、中国人初のノーベル賞と報じられた女性薬学者に注目した。さすがにインターネットの時代であり、彼女について早くも取り扱っている日本語サイトがあった。彼女、屠氏は1930年、浙江省寧波市に生まれ、北京大医学院で、生物薬学を学んだ。漢方薬などを研究し、中国中医科学院の主席科学者に就任したが、博士号や海外留学経験を持たず、学士院会員でもない「三無教授」として知られていたようだ。
中国人ノーベル賞受賞者として彼女が何番目になるのか知らないが、毛沢東以後の中国人科学者としては初めての受賞になるかもしれない。昨日ネットに上がった記事には、中国本土の科学者がノーベル賞を受賞できない状況に触れ、「中国に真の科学者はいない」といった自虐的な声が挙がっていたところ、今回の受賞で「本当の意味での、初めての中国人の受賞だ」などと称賛する書き込みが殺到したことが紹介されていた。
この紹介文で注目したいのは、「本当の意味での」という表現である。日本でもノーベル賞受賞者の人数を紹介する時に「アメリカ国籍をとった日本人を含めて」と表現されることが多い。どうもノーベル賞受賞者を眺める時に、国籍ではなく、民族という意識で眺めるのは日本人も中国人も変わらないようだ。
20世紀の日本では、民族ではなく、大学の偏差値比較でも論じられ、「なぜ、京大は東大よりもノーベル賞受賞者は多いのか」という議論がなされたりした。大村先生の受賞で、山梨大学や東京理科大学出身者の研究者は喜んだのではないか。
科学関係の栄誉にはいろいろあるが、その選考過程や基準に関しある意味ファンタジーもあるノーベル賞は特別な存在である。その栄誉を受賞者だけでなく関係者も大喜びできるのは、他の賞にはない公明正大と思われる点だろう。無条件に誇りにできる栄誉なので、関係者のカテゴリーを狭い大学や民族にかこつけて喜ぶのかもしれないが、この賞の創設者、ノーベルは広く世界の幸福を祈っていた。
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