活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2015.11/10 発見型創造

寄生虫が原因で発病する熱帯病の特効薬に使われる物質「エバーメクチン」、それを作り出す微生物がいたのは、伊東市川奈のゴルフ場で採取した土の中だったそうだ。大村博士が仲間と訪れた、そのゴルフ場で土を採取したのは、1970年代の半ばで、その後研究を重ねエバーメクチンの発見・開発に至ったのはその5年後だという。採取、培養、分析の繰り返しという地道な科学プロセスによる作業の繰り返しでノーベル賞の受賞につながった。
 
このようなプロセスを発見型創造プロセスと当方は分類している。発見に至るプロセスは科学的であるが、発見そのものは偶然であり、なぜそれを発見できたのかを説明できない非科学的瞬間なので全体は非科学的プロセスとなる。
 
3年前の山中博士のプロセスと異なるのは、自然現象に潜む偶然をそのままプロセスに組入れている点である。これに対し山中博士の場合は、仮説に基づき実験室の中で作り出した自然のモデルへ刺激を与え機能を取り出そうとしたのである。その後は少しかっこ悪いがあみだくじ式に、すなわち非科学的に実験を行いヤマナカファクターを創造している。
 
面白いのは、いずれも研究成果が非科学的プロセスの偶然性に依存している点である。科学者が用いる非科学的プロセスに興味を持ち、当方は30年間の技術開発人生において積極的に取り入れるようにしてその効果を検討してきた(注)。
 
ただし発見型創造プロセスの重要性に気がついたのは、高校生の時であり、名古屋大学平田博士のふぐ毒研究を新聞で読んだ時である。平田博士の発見したテトロドトキシンは、当時中日新聞で何度も取り上げられていた。平田博士以外に野依博士の研究など天然物の生理活性にについて話題になっていた、ちょうど同じ時代に大村博士は土を集めておられたのだ。
 
大村博士は土を集めて新たな真実の発見を目指されたが、平田博士は毒を持つ生物を求めて手当たり次第に研究を進められたのである。両者ともに、新発見できなければ成果が出ない仕事である。この発見を効率よくできないのかいろいろ考えてみた。そして実務的には、使えそうな工夫、ヒューマンプロセスにまとめることができた(ご興味のある方は問い合わせていただきたい)。
 
科学の研究は、科学的にまとめなければ評価されないが、技術では非科学的でも安定に機能すればユーザーの評価が得られる。科学の研究でさえも非科学的プロセスが使われているのである。技術開発でも上手に非科学的プロセスを使い、科学的プロセスで開発している他社との差別化を図るべきだと思っている。
 
(注)周囲から独創性があると、よく言われたが、独創性があったのではなく、創造とは何かを考え続けていたのである。ただこの活動を企業で行うと誤解を受けることも学んだ。転職の原因となった当方のデータ用FDを壊した犯人は、非科学的プロセスを用いて問題解決したことを聞き、小生を叱った人である。非科学的プロセスは、完璧な科学的プロセスを目指す人からは、許しがたい「テキトー」な姿勢に見えるようだ。山中博士もテレビのインタビューで、発見プロセスを秘密にしていたことを語っている。転職後その改良に努めたポイントは少しでも周囲に受け入れもらえるようなプロセスに仕上げることだった。
 
 

カテゴリー : 一般

pagetop