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2016.07/08 熱伝導樹脂

一般に高分子材料は導電性や熱伝導性がわるい。ゆえに樹脂の導電性の改良には、カーボンなどの導電性フィラーを添加し、熱伝導性の改良にはダイヤモンドやBNなどの熱伝導性フィラーを添加する。
 
このような高分子材料へフィラーを添加する物性改良方法では、パーコレーション転移が観察される。面白いのは導電性の改良時に現れるパーコレーション転移の挙動と熱伝導性材料で観察される挙動が異なることだ。
 
熱伝導性材料で観察されるパーコレーション転移の挙動は、弾性率の変化で観察されるそれと近い。理由を知りたい方は弊社へ問い合わせていただきたいが、古典的には、複合材料の教科書には、混合則として十把一絡げで説明されている。
 
また、少し手の込んだ方法としてMaxwell-Euckenの理論式やNielsenの理論式が知られている。しかし、高分子材料にフィラーを添加したときには、クラスター生成を確率的に捉えるスタウファーらによるパーコレーションの考え方で、統一的に理解可能である。
 
面白いのは、導電性材料で観察される不安定さでは、パーコレーションという現象を直感的に理解していただけるが、熱伝導や弾性率の問題では、ぴんとこない人が多い。
 
この理由は、例えばフィラーの熱伝導性が大きく変化しているのに、添加量と複合材料の熱伝導率の関係が一つの曲線上にプロットされたり、アスペクト比の効果が導電性ほど顕著に現れなかったりと導電性材料とは少し異なった挙動となるからだ。
 
現象を科学的に正しく理解できないと材料開発を進めることができないので、年に2-3件はこの関連の質問がある。科学的にはフィラーの分散をパーコレーションで説明でき、パーコレーションによる考察が可能となれば、あとは技術で改良するだけである。
 
ただし、科学的な美しいデータが得られないこともある。科学と技術の違いを理解できておれば難しい問題ではないのだが。また、熱伝導性フィラーとしてダイヤモンドが要求される場面は少なく、シリカやアルミナ程度でフィラーとして十分目的を達成できる場合が多い。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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