2015.11/21 プレミア12準決勝の結果について
プレミア12準決勝の結果(日本3―4韓国(2015年11月19日 東京D))について評論家がいろいろ語っているが、監督の投手継投策を問題視している点は共通している。素人が見ていても100球どころか90球にも到達していない大谷投手をなぜ交代させる必要があったのか疑問である。
監督は、「8回は、則本でいくと決めていた。」と語っていたが、大谷投手が打たれてからでも大丈夫だったように思うし、あのまま8回を大谷投手が投げても不都合となる因子は何も無かった。さらには9回まで投げさせても良かったのではないか。勝負にこだわったなら、それが正しい判断だったように思う。
原因は、監督の慢心にあったのではないか。たった3点で勝利を確信したのだろう。しかし、負けた今となっては本心を語ることはないが、ほぼパーフェクトだった投手を交代させた理由は、何かドラマを期待した慢心以外に写らなかった。
さらに理解不能の采配は、若干20歳の左腕をものすごいプレッシャーの中で起用するというむちゃくちゃな決断をさせた。おそらく、監督はリーダーの資質に問題があるのでは、と思いたくなるのが、今回のゲームを最後まで見た当方の感想である。
研究開発でもこのようなタイプがいた。酸化スズゾルを用いる帯電防止技術が実験室レベルでほぼできあがり、生産技術に関する課題を詰めなければいけない時に、センター長命令で企画調査から進めてきた当方が突然テーマから外された。
転職して1年程度しか経っていなかったので、指示に従ったが、驚いたのは技術開発から完全に手を引けというのである。ものすごいマネジメントだと思った。そして若い係長クラスの女性をリーダーにした製品化開発チームが新たに結成された。そのバックアップをする管理職スタッフチームも決められたが、その中に当方は入れていただけなかった。
ところが、新チームのメンバーはパーコレーション転移を甘く見て、製品化に失敗をする。そして、「酸化スズゾルの技術は物にならない」という結論をそのチームは出して、時間が無いという理由でSbドープの酸化スズを帯電防止材にして新製品に採用したのである。
さすがにこれにはびっくりした。バブルがはじけて運良くリストラがあり、当方が高分子材料開発部門のリーダーになった。すぐに、酸化スズゾルを用いた帯電防止層を製品化できそうな商品を探し、印刷感材で商品化を成功させた(注)。最初の製品化失敗から半年後のことである。
当時のセンター長は若い女性に大きな成果を出させたかったのだと思うし、リストラ後そのように語っていた。しかし、なぜ当方を開発チームから外したのか言われなかったが、恐らく酸化スズゾルを用いた帯電防止層を簡単な技術と誤解したのだろう。パーコレーション転移の理論と実践知を完璧に理解しておれば、確かに簡単な技術である。しかし、形式知だけでは困難な問題に遭遇したときに解決できなくなる難しい仕事でもある。
実際に若い女性のチームが失敗した配合処方と、その半年後当方が製品化に成功した処方とは大差が無かった。ただ、生産技術における対策を十分に行ったかどうかの違いである。いくらロバストが高い結果が出ているからといって、それは生産技術を甘く見ても良い、と言うことではない。生産技術には形式知だけでは語れない問題が時にはある。研究開発では、製品が無事完成するまで気を抜いてはいけないのである。
3点差があるから勝てるだろう、と考えたかどうか知らないが、もし、監督が準決勝に絶対に負けることができない、と不安に感じていたなら、大谷投手が韓国チームのバッターに捕まるまで続投させるという判断となったように思う。
そのくらい大谷投手のピッチングは完璧だった。あの状態で投手交代を行ったのは、勝利以外の要素に目が奪われたのだろう。リーダーたるものは、最後まで油断してはいけないのである。ましてや勝負を自分でデザインしようとする驕りは禁物である。
(注)この商品は印刷学会から技術賞を受賞した。また帯電防止技術は日本化学工業協会技術特別賞を受賞した。
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