2012.11/20 帯電防止技術と電気粘性流体
帯電防止技術は高抵抗の半導体領域の特性を示す材料設計技術ともとらえることができる。B社勤務時に電気粘性流体の技術開発に携わったが、この材料に用いる微粒子は「帯電はするが、放電が速い」という二律背反の性質を持つ必要があった。研究開発のプロジェクトに加わったことが転職しなければならない状況を生み出したのだが、今から思いおこせばデータディスクを壊されたのは帯電防止技術を研究開発するための運命だったのかもしれない。
二律背反の性質をもった粒子が要求されるので材料設計は高度な技術が必要です。当時カーボン材料がプロジェクトで検討されていたが、3種類の複合材料粒子をプロジェクトに提案した。弊社電脳書店で販売している問題解決法で見出した(1)体積固有抵抗が表面から粒子の中心部にかけて低くなった傾斜機能粒子、(2)導電性の異なる2種の素材からなる超微粒子分散型微粒子、(3)コンデンサー分散型微粒子の3種を提案したのだが、いずれもプロジェクトで検討していた単体カーボン粒子よりも高い性能を示した。
帯電しやすく放電しやすい材料は導電性を高める必要がある。電気粘性流体では10の9乗Ωcmよりも高くなければ応答性が悪くなるが、この導電性では電場をかけた時に電流が流れすぎて電気粘性流体として使い物にならない。電気粘性流体に使用できる粒子としては絶縁体が望ましいので材料設計方針として複合材料となる。提案した3種の材料の構造を微粒子で創り込むのは高度な技術が要求されたが、半導体用高純度SiC合成プラントの設備が稼働していたので容易に開発できた。
この電気粘性流体の研究で帯電防止層の体積固有抵抗として10の9乗から10の10乗Ωcmであればよい、という経験知を獲得したが、実際に帯電防止層の研究開発を担当し、パーコレーション転移が起きているならば体積固有抵抗の上限は10の11乗Ωcmとなる、という経験知に修正された。日々の実務で獲得される経験知は重要で、教科書に書かれていない知識であれば研究を行い確実なものとして身に着けるのが望ましい。必ずしも日常業務の時間内でできないというのであれば、産学連携テーマとして実行するとよい。それが難しいならばヤミ研という方法がある。
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